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デジタル版・新聞

インタビュー

日本舞踊の名手にして希有な創作振付師  藤間貴雅さん

「今年もまた ハワイ公演を致します」

 

元年者150周年の祝賀行事が続くハワイで昨年、『HARMONY OF JAPAN』 と題された、日系移民の歴史を寿ぐにふさわしい公演が開催された。

出演したのは2人の主宰者が率いる、日本の伝統芸能のグループだ。

日本から来た舞踊家の藤間貴雅さんとお弟子の藤間流の踊り手たち、ハワイからは雅楽家の社本正登司さんが指導するハワイ大学の雅楽会メンバーである。

日本とハワイの演者が同じ舞台で出会い、日本舞踊の踊りと雅楽の演奏が互いに織りなす時空は趣のある日本情緒にあふれ、見応え聴き応えたっぷりに観客を魅了してくれた。

藤間貴雅さんのハワイ公演は5度目にあたる。

非凡な舞踊家として、NHK 大河ドラマや宝塚歌劇、蜷川幸雄氏の芝居などの振付所作指導の 専門家として、はたまた日本の伝統芸能を積極的にアウトバウンドさせようとするNPO主宰者として、八面六臂の働きをしている貴雅さんを追った。 (取材・文 奥山夏実)

 

 

小学生の頃から能が好きだった

公演日の1週間ほど前、初めて貴雅さんに会った。

 

デカい。

 

着物姿ではあるけれど、ラガーマンみたいな体躯だ。

この御仁が日本舞踊の舞手とは!?  

初対面の印象はすぐに覆されることになるのだが……。  

貴雅さんは小学生の頃すでに、朝早くから流れる“能入門”のラジオを聴き入っていたという。

「なんなんでしょうね(笑)、両親は歌舞伎の家系ではないですけれど。子どもの頃から能や歌舞伎が好きで、中学では歌舞伎の台詞回しや踊りの真似をしていましたから」  

 

 

今回のハワイ公演では、同じ平安時代に生きた平知盛(たいらのとももり)を踊った。

「この踊りは歌舞伎の『船弁慶』の後半部分を抜粋して構成演出をしました。僕が大好きで、いまでも敬愛してやまない5代目中村富十郎さんの十八番でもありました」  歌舞伎役者の中村富十郎(1929〜2011年)は、はっきりとした台詞回しと切れのいい演技で時代物、世話物、所作事と幅広い芸域を誇り、立ち役(男役)中心に数多くの役柄を演じる人間国宝であった。

「中学時代から富十郎さんの追っかけをやっていまして、声が素晴らしく、舞踊の天才です。立川市民会館で公演があった時に楽屋に行ったら会えちゃったんです。もう嬉しくて、僕も富十郎さんのように踊れるようになりたいと思いました」

 

 

 富十郎さんは日本や海外の公演の旅先から、貴雅さんに手紙をくれるようになり、ますます歌舞伎にのめり込んでいった。歌舞伎役者になろうとは思わなかったのだろうか?

「大学の後輩に中村獅童さんがいて、獅童さんのお母様に芸事の精進や歌舞伎界の厳しさなどをよく教えていただき、同時期に僕の祖母から日本舞踊の稽古場を継いでくれと言われたので、踊りの道に進もうと決心しました」  

藤間章作氏に師事し、2002 年から藤間貴雅日本舞踊研究所を主宰。藤間流は歌舞伎とも縁が深く、歌舞伎の振付などもするため、貴雅さんも請われてNHK大河ドラマや宝塚歌劇、蜷川幸雄氏の芝居などの振付所作指導を担当してきた。

メディアにおける古典芸能の所作指導の仕事は人材が少なく、スタッフを育てる環境も整っていない。

「即戦力が問われる仕事ですので、毎日緊張して現場に入っていました。特に蜷川さんの演出に13年間通わせていただいたことは感謝しています」

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