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デジタル版・新聞

インタビュー

公益財団法人天風会 評議員/教務主任  南方哲也さん|天風会理事/東京賛助会副代表 村里泰由さん

左:南方哲也さん  右:村里泰由さん

 

心身統ー法を創案し、広めた中村天風の教えを実践しておられる天風会 のみなさんが、ホノルルで4度目の修練会を開催します。それに先立ち、3度目の修練会の講師を務められた南方哲也さんと村里泰由さんに、天風会と の出会い、それぞれの体験、天風哲学への想いについてお話を伺いました。

聞き手:下吉陽子

 

 

南方哲也さん

人間は幸せに生きられるように出来ている

 

 

保険代理業からリスクマネージメントの専門家に

リスクマネージメントを教えておられた そうですが? 私は保険の代理業をしていましたので、皆さんから色々と相談されることが多くなり、経営コンサルト、それに関連した仕事も 始めました。

 

保険をやっていると色んな相談を受けるのですが、人生いろんなリスク がつきものですから、結局は色んなリスク の相談を受けるわけです。そこで、リスクマネージメントに興味を持ち始めました。

 

その頃日本では、あまりリスクマネージメントを研究している人はいなかったのですが、大学の先生と一緒にリスクマネー ジメント学会というのを作って、私は事務局長をしていました。それをやっている間に、 58オの時に、大学で教えてみないかと誘われて、九州の長崎県立大学でリスクマネー ジメントの教授になったのです。

 

 

ハワイに来られるようになったのはどんなきっかけですか。

変な話ですが、教授に来てくれと招かれて行ってみたら助教授だったんです。どうしてですかと聞いてみると、とにかく助教授から始めてもらいたい。もちろん教授の資格は十分あるのですが、民間から入っているの で、論文5本と本を1冊書いてほしいと言われたのです。本はこれまでも10冊ぐらい書いていますと言ったのですが、ノウハウもの ではなく、学術書を書いてほしいと。

 

大学は夏休みと冬休みは自宅研修だったのです が、家ではできない。たまたまコナに長男が 住んでいましたから、そこで毎年夏休みと冬休みは妻とハワイに来て、本を書くことにしたのです。それでもう、21年目になります。 長男は、今は日本に帰って保険の仕事をしていますが、面白いことに、長男の子ども が、今ハワイにいて、ハワイ島のHPAという 全寮制の高校に通っているんです。

 

 

死と向き合うなかでの天風会との出会い

天風会との出会いはいつですか。

天風会との出会いは、慶応大学で経済学を学んでいた20才の頃に遡ります。当時、学生としては経済的には恵まれた生活をしていました。父からは毎月3万円送金して貰っていて、その後保険会社に就職した時 の初任給が7800円ぐらいでしたから。

 

ところが、ちっとも幸せを感じなかったの です。 「財を豊かにすることが人間を幸せに する」というのが経済学の原則ですが、そ れに疑問を持ち始めたのです。

 

そこで哲学を学び始めて、いわゆる悲観哲学を勉強して、たまたまショーペンハウェルの『幸福論』を読んだのです。 ショ ーペンハウェルは、その中で、人間は快よりも、不快を感じることのほうが多い。

 

何 故かというと、欲望が充足されないことの方 が多いからだ。すると、欲望を抑えなければならないが、それを突き詰めると、結局は死ぬことになるんですね。彼の結論では死んだ 方が幸せだということになる。それで、勇気ある若者は自殺しなさいと。

 

それで、私はその通りかなと思って、近所で睡眠薬を買って来 てそれを大量に飲んだのです。ところが、2~3日眠った後で目が覚めてしまいました。そ れで、別の物理的な方法で死ぬことも考えたのですが、すぐに死ぬ理由もないので、教会に行ったり、座禅を組んだりしていました。

 

そんな時に母から、 「面白い話をする人が いるから聞きに行って見たらどうか」と勧められたのが、中村天風先生との出会いでした。

 

 

中村天風とはどんな人でしょうか。

中村天風は、明治9年生まれで、満州で 軍事探偵として活躍しました。帰国後、肺結核となり、そのために、それまで強かった心が、大変弱くなってしまいました。何とか病を治すことができなくても、心だけは強くしたいと、アメリカに行って医学を学び、さらに、道を求めて、ヨーロッパにも渡ったの ですが、どうしても答えがでなかったので す。

 

絶望のなかで帰国する途中に、たまたまヨガの導師に出会い、俺についてこいと言われてインドに行くんです。中村天風は、そ こでカルマヨガを学び、日本へ帰ってから、 それを基礎として、自分なりに発展させて、この心身統ー法を編み出したのです。 修行を通して、結核も治っていたのですね。

 

 

人間は幸せに生きられるようにできている

天風先生の話を聞かれて、どう感じられ ましたか。

天風先生の話を聞いてすぐにわかったのが、彼の考え方のもとですね。中村天風は 「本来、人間は幸せに生きられるように できている」と説きます。

 

私はそれまで、消極的な考えにとらわれて、消極的な観念要素を自分の潜在意識に植え付けていたの です。だから、頭の中がマイナスになる。そ れを作り変えることによって人間は幸せになれる。 中村天風の教えでは、観念要素を積極的なものに変えれば、人間は幸せになれるの です。

 

例えば、寝る前に鏡を見て、積極的な暗示を与え、朝起きるとその暗示を受け取る。このような自己暗示法を用いることで、 「観念要素の更改」が可能になるのです。体カ、胆力、精力、能力、 判断力、断行力という 6つの力を受け入れることも必要です。それを豊富に受け入れるには、積極的な観念を持つこと、潜在意識の積極化によってそれ が可能になる。そういう教えだったのです。

 

「これは面白い」と思って、自分で実践してみたら、どんどん自分が変わって来たんです。そ して 「これは素晴らしい」と思うようになり、 その時から既に50年以上実践しています。

 

 

どのように実践されたのですか。

天風の教えというのは、道場などに行ってやるのではなくて、自分で毎日実践しなければならない。当時、中村天風は毎月講 習会を開いて、そこで教義を説明しておられました。夏は修練会があって、そこで13日間、毎日朝8時から夕方5時まで勉強実 修していました。

 

天風教義というのは、非常に内容が深いのです。心の持ち方と使い 方、身体の活かし方と使い方からなります。この4分野にわたって非常に詳細に指導して下さいました。ヨガが基本になっていま すが、中村天風はヨガで実践して来られたことを、日本に帰ってから、日本人が毎日仕事をしながら実践できるように仕組まれたのですね。

 

物の考え方、言葉の使い方、心の使い方、呼吸の仕方、体の鍛え方などで す。色んな方法が組み込まれていて、それを 実践しながら日常生活を送っていると、ほかの人達とどんどん差が着いてきます。 6つの謀力が増加してくるのです。つまり、体力、胆力、判断力、断行力、精力、能カ がレベルアップしてきて、色んなことができるようになりました。

 

具体的にはどんな変化でしょう。

周りの人からは、いつもスーパーマンと言われていましたね。例えば、仕事はどんど ん進む。仕事をしながら勉強するのもどん どんできます。26才の時に自分でビジネス を始めたのが、30才ころから3時間睡眠 で、58才まで会社を3つほどやっていました。

 

そして、夜は勉強していたのですね。健康法だけ教えているところとか、心ばかりやっているところはありますが、心も身体も両方を鍛えないといけないのです。

 

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