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デジタル版・新聞

インタビュー

ライター・通訳・翻訳家 下吉陽子さん

仕事を通して学んだアメリカと日本のビジネス・システムの違い

ハワイカイに引っ越してからレインボー学園で働くことになりました。ハワイで最初の仕事です。事務長として5年間勤めました。子供たちがすごくかわいくて楽しかったですよ。 その後に、ハレクラニ・コーポレーションで働くことになり、VPのアシスタントを3年ほどやりました。この経験で、アメリカのビジネスの仕組みを勉強することができました。

 

アメリカのシステムでは、例えばホテルならば、べルで入ったらずっとベルなんです。もっと上にいこうと思ったら、自分でアプライしないと上には行けない。どの部署でもディレクターがすべてを決める。アシス タントはなんの権限もないし、システムとしてはすべてトップダウンですよね。

 

下の人が 意思決定に関わることはあまりないです。 下の人が昇進するには自分からどんどんア ピールするしかない。 日本の場合はスタッフがそれぞれ担当を任されていて、 「こうしたらどうでしょう」と少しずつ上に持ち上がつてい<システムです。そこが全然違う。日本の会社の良い点は、一人一人の才能をとことん追及するところ。

 

ラインの末端も「ワーカー」ではなく「職人」だと思って働いていると思うんです。自分の仕事にプライ ドを持っている。例えば、日本の植木屋さんは植木の専門家で、誰よりもプライドを持 って仕事をしている。でもアメリカの植木屋さんの場合、ポスは植木のことを知っているかもしれないけれど、下の人間は言われたとおりに切っているだけ。

 

「どうやったらもっと良くなるか」を考えることを求められてもいないですよね。そういう面では日本のシステムは素晴らしいと思います。 弊害もありますが、終身雇用のシステムも良かったと思いますね。明日クビになるかもしれないと思いながらでは、いい仕事はできないですよ。まぁ、最近は終身雇用もなくなってきていますけれど。

 

アメリカの良い点は、風通しが良くては っきりしていること。ルールを守る。日本の場合は規則があってもあいまいな部分がある。それでは国際社会に通用しないんですよね。そういうところはアメリカの方が良いかなと思います。

 

 

ハワイで再び起業、いかにビジネスを成り立たせるかが今後の課題

ハレクラニ・コーポレーションで3年程働いて、やっばり組織の中で働くにはあまり向いていないと思ったのと、子供が大きくなってきたこともあり、そろそろ自分の好きなことをやってもいいかと思い、自分の会社 「MAY COMMUNICATIONS LLC 」を始めました。 今はライターと翻訳、通訳をしています。

 

翻訳は銀行関係、契約書、メニュー、ニュー スレター等、なんでもやります。翻訳はハワイに来る前からもやっていました。ライター としては企業の広報誌を作っていたので、企画を立ててアポを取って取材、編集まで全部自分でやっていました。ですから東京でやっていたことの延長のようなものですが、今はひとりでやっています。

 

プライベートな話になりますが、実は昨年、乳がんで手術を受けたんです。去年の夏、マンモグラフイの検査を受けた時には 何も写っていなかったのですが、自分でしこりを見つけてしまったんです。ステージ1 で、2回手術を受け、その後、抗がん剤療法を受けました。

 

抗がん剤療法を始めて、2週間くらいで髪が抜けてしまって、それは分かっていたのであまり驚かなかったのですが、血圧がものすごく下がつてしまって入院したこともありました。体はむくむし、体力は落ちるし、食べ物の味も変わる。何を食べても美味しくない。抵抗力が下がつているから生ものは禁止ですし。

 

でもその時はそれほどつらいとは思っていなかったです、仕事も量を減らしてやっていましたし家事は喜んで全部放棄(笑)しましたが、日本の姉が来てくれたり、LAに住んでいる娘が帰ってきて家事や身の回りの世話をしてくれて、すこく有り難かったです。近所の友人もこ飯を作ってきてくれたりして、本当に皆さんにお世話になりました。

 

今はもう抗がん剤治療は終ってホルモン療法を受けています。 抗がん剤治療って心にも作用するんです ょ。 「キモ・ブレ一ン」というのですが、物事に集中できない。今までスラスラ書けていた文章も、まったく書けなかった。もうライ タ一をやっていけないんじゃないかと思ったくらいです。 もう少し体力が戻ったら、日刊サンの連載もブログにしてみようかなと思っています。

 

今年は「我慢の年」ですが、これから少しずつ色んなことをやっていきたい。ガンで中断していた取組中のプロジェクトもあります。会社の名前に 「コミュニケーションズ」という言葉を入れたのは、「異なる文化の開のコミュニケーションを中心に仕事をして行きたい」という気持ちがあったから。前向きに頑張って、皆さんの役に立つことをしたいといつも考えています。ただ、それをビジネスとしていかに成り立たせるかが、大きな課題ですね。い<ら良い仕事をしたいと思っても、自分の足元を固めないと何もできませんから。

 

 

ハ ワイシニアライフ協会

ハ ワイシニアライフ協会との関わりは、梨本&アソシエイツの梨本昌子さんに、「こういう会を作るうとしているので手伝わないか」と、声をかけて頂いたのがきっかけです。それで、坂井諒三さんや野田省三さんなどにこ紹介頂き、事務局として、設立の準備からお手伝いを始めました。

 

今は事務局業務、特に会計と広報を担当しています。基本的には裏方として携わっています。 シニアライフ協会はすこい組織だと思います。 1年に200以上イベントを行っているので、ほぼ毎日のように何かをやっている。それぞれ担当の人が仕切っています。

 

坂井会長が素晴らしいのは、マイクロマネージメントをしないところですね。だから皆が自分の長所を最大限に生かして、楽しみながらのびのびと活動している。

 

しかも、リタイア した方が多いので 「これを利用して自分で利益を得よう」という方がいない、欲がないんです。自分の生きがい、あるいは社会に貢献したいという気持ちで、どうしたらハワ イ にとっても自分たちにとっても良いかをいつも考えている。お金のない団体だから皆さん手弁当ですし、交通費も自分で出している。

 

とっても良識ある人たちが運営している会だと思います。 日本の方がせっかくハワイにコンドを買 っても、一番問題なのは、ここにきても友達が誰もいないことなんです。ー通りのことをしてしまうと、する事がなくなってつまらなくなってしまい、そのうちハワイに来なくなってしまう。 「お友達ができたらもっとハワイに来たくなるのではないか?」という発想で始まったのがシニアライフ協会ですね。

 

現在の入会者数は1300人を越えていますが、会員の実数は950人くらいです。ただ、他の団体に比べて、退会する人の極端に少ない団体だと思います。 先日のチャリティゴルフ大会には140人以上が参加してくださいまして、過去最大の人数となりました。だんだんとシニアライフ協会の趣旨が皆さんにご理解頂けるようになったのかなあと思います。

 

今回は、日米協会を通して、「レ インボー・フォー・ジャパンキッズ」という、東日本大震災の被災者の子供たちをハワイに呼んで、楽しく過こしてもらおうという企画に寄付をさせて頂きました。8月 13日には、 HISさんと共催で、「レアレア5Kチャリティラン&クリーンアップ」を開催します。

 

最初はお友達作りのための社交クラブ的な要素が大きかったのですが、少しずつチャリティなどの社会貢献に軸足を動かしていくことができているのではないでしょうか。そういう面で今年は大きな転機と言えますね。

 

震災の募金活動もずいぶん頑張りましたし。今後こういった活動をどうやって継続できるか、基盤の強化が課題だと思います。 最近は、シニアライフ協会の活動がだんだん知られてきて、若い会員が増えています。震災の時も 「何か役立つことをしたい」 という若い人たちが、シニアライフを通してボランティア活動に参加してくれたりしました。

 

一応 「シニア」となっていますが、 「シニア」という言葉の意味は、 「年寄り」ではなく、 「経験を積んだ、知恵のある」と解釈して頂きたいんです。もちろん、年齢は関係なく若い方も入会できます。会員には20代の方もいらっしゃいますよ。 会を運営している皆さんのパワーは本当にすごいと思います。皆が生き生きと動いていて、それをうまくまとめている坂井さんのリー ダーシップも素晴らしい。皆がニコニコと幸せな気持ちになっているうちに良い方向に行っているんです。

 

 


下吉陽子(しもよしようこ)

東京都杉並区出身。一橋大学法学部を卒業後、医療 関係の貿易会社に入社。自社の広報誌を担当するよ うになったことがきっかけとなり、広告代理店を起 業、ライター・コーディネーターとして活躍す る。 1992年結婚のためハワイに移住。レインボー学園 事務局長やハレクラニ・ コーポレーションの勤務を 経て再び起業し、「MAY COMMUNICATIONS LLC」を設立。「ハワイの素晴らしさ」をより多くの人 に知ってもらうことを目標に、ライター・通訳・ 翻訳家 として活動中。「ハワイシニアライフ協会」の理事/事 務局として、その運営にも携わっている。


 

 

(日刊サン 2011.08.12)

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