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デジタル版・新聞

インタビュー

ウォータークレス・ファーム オペレーション・マネージャー デービッド・スミダさん

 

ワイキキから西へ車を走らせ、Hlをアイエア方面へ降りカメハメハ・ハイウエイを走っていくと、広大なショッピング・モールエリアに、こつ然と現れて来る緑豊かな田園風景。ここは『スミダ・ファーム』。ハワイ全島のウォーター・クレス供給のうち、75%の生産量を誇る農場です。

 

2012年、地球の食生活は今、いよいよハワイにも上陸した遺伝子組 み換え技術など、人類史上例のない不安な側面もいろいろと抱えてい ます。そんな中でスミダフアームは “Old way is still good way” と、古き良きスタイルを守りながら、現在まで84年間もこのファミリ ー・ファームを続けてきました。また彼らは、次世代を担う大切なローカルの子供達に持続可能な農業について知ってもらおうと『ファーム 体験ツアー』も行っています。農業というファクターを通し、大地の恵み の尊さ、農業への献身、収穫のありがたさなどを感じてもらおうとい う、とてもユニークなコミュニティー・サービスです。

 

このファームを妹のバーバラさんと不屈の精神で支えているのが、3世のデービッド・スミダさん。語り口はもの静かですが、とても繊細で純なスピリットが伝わってきます。オフタイムの彼は実は…、真面目で飛んだアーティストなのです!Sumida Farm, Rocks!

取材・文:碓井真理子

 

 

スミダ・ファームを支える、ハワイ・ローカル

 

 

スミダ・ウォータークレス・ ファームは、今年で84周年。

ハワイで一年中収穫できるウォータークレス。きっと、もう皆さんの食卓でもおなじ のことでしょう。ウォータークレスは、アブラナ科の多年草で、別名は、クレソン、オラン ダミズガラシ。

 

土の中ではなく、きれいな清流で育つデリケートな緑色の葉野菜で、そ の独特な歯こたえと、なんともいえない辛みのある洒落た味が特徴です。

 

サラダやい ろいろな料理に良く合い、ビタミンA、C、B 1、鉄、ポッタシアム、リン、カルシウムやBカ ロチン、イソチオシアン酸塩、ルチン、繊維な ど、大変豊富な栄養価にも富んでいます。

 

1928年、スミダ・フアームは、広島から の移民であるデービッドさんの祖父母、モ リイチ&マキヨ・スミダ夫妻によってはじめ られました。当初は、2エーカーでしたが、 隣接した農家が徐々にリタイアしていくに つれ、借地を10エーカーまで拡大。タロ、 バナナ、米、ウォータークレスなどの湿地に 適した作物を生産していたそうです。

 

1950年に、2世のマサル&ノーマ夫妻が後を継いだ際、ウォータークレスがこの 土地での栽培に最も適していることから、 作付けをすべてウォータクレスに切り替え ました。

 

マサルさんは、特に1970年代、押 寄せる都市開発の波にファームのリース契約が奪われてしまわないことと、ウォー タークレスを育む豊かな湧き水が汚染され てしまわないことをいつも気にかけ、かたくなにフアームを守り続けたそう。

 

今日ではスミダフアームは、ハワイで一 番大きなウォータークレス農場です。1982年にマサルさんがリタイアし、3世で ある息子のデービッドさんと、娘のバーバ ラさんが後を継ぎました。 今年ファームは、なんと84歳。

 

ファーム があるこのアイエアの土地のユニ一クな特徴は、前述の豊かな湧き水があること、そし て一日中さんさんと太陽光があたること。 「この土地には、マナが溢れているんだ。」 と、デービッドさんは言います。

 

自然の恩恵 と人の農作業で元気に育てられたスミダ ファームのウォータークレスが、ハワイの 人々の食卓へ幸せを運びます。味は、シェ・ マブロをはじめハワイの名立たるシェフ達 からもお墨付き。 8月のある早朝、私たちが農場を訪ねて みると、デービッドさんと妹のバーバラさん は、すでに忙しく出荷の準備を行っていま した。

 

私たちに気がついたデービッドさんと バーバラさんが、挨拶を交わしにこちらへ やって来てくれます。 スミダ・ ファームのファンが本当に多い のも無理はありません。お二人の自然な笑顔、柔らかく飾らない佇まいと話し方。気だ ての良さが伝わって来ます。

 

この人たちがこ のファームの守り手なのだと思いこの田園 をしみじみ見渡すとき、忙しい現代社会が 忘れがちな何か大切なものを思い出すよう な、そんなロマンヘと誘われてしまいます。 おいしくてヘルシーな野菜を育てあげる 『農作業』そのものは、じつはロマンだけで 語れるものではなく、過酷な労働であるとわかっていても…。

 

開口一番、デービッドさ んが教えてくれました。 「じつはつい先日、僕たちと土 地の持ち主であるカメハ メハ・スクールの間で、 ファームの次の20年間の リース契約が成立したところなんだ。」

 

私には、これ が朗報だとすぐに分かり ました。スミダさんたちが 雨にも負けず風にも負け ず受け継いで来たファームが、この先また20年、安 心して続けられるのです。

 

 

豊かな湧き水に育まれるウォ ータークレス、知恵と技術で支える優しいファーム

「ファームを見学してみるかい?」というデービッドさんのお誘いにしたがって、我々は 農場のほうへと足を向けました。デービッ ドさんは、白いバケツに日本製のカマを入 れで黒い長靴姿。カマを手に取り「古くか らの日本のカマが一番よく切れるし、安い んだ。」と微笑みます。

 

フアームでは、す でに10名くらいのワー カーたちが麦わら帽子姿でかたまって働い ていました。周囲をコンクリートのビル郡に 囲まれたウォータークレスの緑のオアシス には、水鳥が舞い、かかしが風に揺れて、そ こだけぽっかりと昔のハワイの田園のまぼろしを垣間みるようです。なんともいえなく、 のどか。

 

水田に近づいてみると、水の深さは だいたい3インチくらい。あらゆる所に底か らポコポコと透明な水が湧き出しています。 もっとよく見てみると、星の数ほどの小さな かわいい魚たちが、流れに添ってやさしく 泳いでいます。貝もいます。

 

10エーカーの水 田には、湧き水が常に河口へと流れるよう、 ゆるやかな傾斜が設けられています。 先代がこのように工夫してデザインした のだそう。

 

「ウォータークレスは土の中では なく、清流で育つ野菜なんだ。水を飲んでご らん。」えっ?飲めるの?そう言われ、しゃが んで冷たい水を手にすくい飲んでみると、な んともいえなくまろやかで、おいしい!湧き水というものを久しぶりに飲みました。

 

スミダ・ファームのウォータークレスは、 だいたい8週間くらいで出荷できるサイズ に育つそう。充分に育つと、一束ずつ手作 業でカマを使い刈り取っていきます。水の 中に残った根からヒゲが出て来て、新しい ウォータークレスがまたびっしりと育つ、こ の循環だそう。

 

「カマで刈り取った後切り落としたはんば な部分も、水の中に投げ入れて戻しておけ ばそこからまた根がつくんだ。」と教えてく れました。とても能率のいい生命力のある 野菜です。スプリンクラーが作動して、ファ ームに水を撒いています。

 

「あの水も、フアームの湧き水をくみ上げて はリサイクルしているんだ。スプリンクラ一 は、害虫のモスが作物に卵を産みつけない ようにすることにも役立っているんだよ。」 1992年、スミダファームは、ナショナル・ エンドゥメント・ フォー・ ソイル・アンド・ウォ ーター・ コンサベーション(国家土及び節水基金)から自然資源の保護に関する優れ た業績について賞を送られたそう。

 

また、害虫駆除対策に成功を収めているハワイの 小農場のモデルとしても、よく知られている そうです。ファームのウォータークレスは、 収穫後すぐに水洗いしてから、よく日持ち するように真空冷却装囲を使って華氏37 度まで急冷するそう。この機械は、マサルさ んが1960年にはじめてハワイヘ導入しま した。

 

スミダ・ フアームは認定された有機農場 ではありませんが、化学肥料は最小限に、 持続可能な技術と革新的技術を最大限に 取り入れて、人と環境に出来るだけ優しく との配慮のもと賢く営まれているのです。

 

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