動物にも気持ちがある ということを伝えたい
3月に出版した著書『犬の気持ち、通訳します』が発売1週間で1万部突破、重版となったAnelaさん。あるきっかけからアニマルコミュニケーターとなり、自身のサロン、イベント、犬の幼稚園、ドッグショー、動物学校での講義などで行う動物の通訳を通して「動物にも気持ちがある」ことを伝え、動物とその先にいる人間にメッセージを送る、輝く人。
インタビュアー:大沢 陽子
きっかけはヒューメン・ソサエティ
アニマルコミュニケーションという言葉を知ったのは、ホノルルのハワイアン・ヒューメン・ソサエティの動物保護シェルターでボランティア活動をしたことがきっかけでした。 はっきりはわからないのですが、以前からこの動物はこんなことを言っているのかな?と感じることはありました。でもそれが本当なのか、動物では確かめようがありませんでした。
シェルターでボランティアをしていたときに“ぼくはこういう理由で飼い主から連れて来られた”とか、“迷子になっていて連れてこられたんだ”とか、犬たちのそれぞれの事情が聞こえてきたのです。ボランティアのパートナーに「この子こういうことを言っているよ」と言ったところ、彼女は「確かめてみよう!」と、事務局に私を連れて行きました。そこには一頭ずつデータがあって、犬がシェルターに来た経緯などが確認できたのです。調べてみると、その日に私が3~4頭から聞いたことがすべて当たっていました。驚きましたよ。「生い立ちが読めるんだね」と言われたのですが、自分では、たまたま当たったんじゃないのかなと思っていました。
次にシェルターに行ったときに、犬たちが遠吠えをはじめたので“どうしたの?”と犬に聞いてみると“今、死にかけている犬が運ばれてきたんだよ。だからその犬が死なないようにみんなで声をかけてお祈りしようぜと言っているんだ”と言うのです。それをまたパートナーに言ったら「調べてみよう」と。事務局に行き、「今、死にかけている犬が来ましたか?」と聞いたら「なんで知っているの?」と言われました。ちょうどその1時間に5頭も犬がやって来て、そのうちの3頭は瀕死の状態だったそうです。「誰に聞いたの?」とドッグトレーナーに聞かれたので「犬」と答えると「それってアニマルコミュニケーションっていうんだよ」と教えてくれました。「そうなの?」というのがはじまりでした。これが2010年のことです。
動物からの伝わり方
6歳で母がなくなり、祖父母に育てられました。祖父母は会社を経営していたので、私がさみしいのではないかと思ったのでしょうね。犬や猫、ウサギ、リスなど、私が欲しいと言う動物を買ってくれました。縁日で買ったアヒルもいて、散歩に連れて行ったりしました。そのときは特に動物たちとコミュニケーションをしていた記憶はありません。普通にペットを飼っていたという感覚でした。
ヒプノセラピーでは、例えば誘導するとき、私の場合は実在する人物が、その人に伝えたいことがあるときだけ出てくるのです。疎遠にしていたおばあさまだったり、ずっと心残りにしていたことがある大学時代の友人だったり、脳死状態のお兄さまのときもありました。どうしても本人に伝えたいことがある人がパッと出てくるのです。そこからは同時通訳をしています。頭蓋骨を調整するヘッドセラピーでは、脳に近いところを触るので、その人の考え方とか、今どんなことで悩んでいるかを手で感じます。
動物が言っていることがどのように伝わってくるかというと、本当にいろいろです。その子によって伝え方が違っていて、言葉の場合もありますし、映像や写真のときもあります。日本語、英語、韓国語、中国語もなんでもOK。私は語学堪能なわけではありませんが、例えば韓国語しか知らない犬が来ても私にわかるように伝えてくれます。変だと思いますよね?でもちゃんと通じるのです。私が伝えるときは、言葉を心の中で言っているという感覚です。そうすると返ってくるのです。
犬の性格は、飼い主さんにとても似ていると思います。おとなしそうな犬を連れてきて、その犬がペラペラとおしゃべりなこともあり、あれ?見た目と性格が違うなぁと思った場合、“あなたの飼い主さん、本当は静かな人ではないんじゃないの?”と犬に聞くと“ふふ、そうですよ”ということも。そこから飼い主さんのことがわかってしまう。まるでうそ発見器ですよ(笑)。
アニマルコミュニケーターという仕事
私がしていることは、「通訳」です。そのままリアルに動物が言っていることを通訳することなのです。 獣医さんやドッグトレーナーと一緒に活動をする機会が多いですね。例えば、麻酔の注射を投与するときに、人間なら「効いてきた」とか「まだここに痛みがある」などと言えますよね。でも動物は言えないので、そこを通訳するのです。“ここに変な感じが残っている”と言っていることを通訳して「ではちょっと薬を変えましょうか」という流れになったりします。本来ウサギは痛みを感じないというけれど“痛いよ”と言っていると飼い主さんに通訳し、飼い主さんが獣医さんにそれを伝えて、治療法を変えたら、そのウサギが元気になったこともありました。
自分のルールとして、通訳の枠を絶対に超えないことを決めています。私は彼らが言いたいことだけをお伝えして、あとは飼い主さんと獣医さんやトレーナーさんにお渡ししています。 日本にはアニマルコミュニケーターの仕事で呼ばれることが多くなってきています。犬に限らず、どんな動物でもやってきます。魚も来ましたよ。熱帯魚を飼っているお客さまから「全然動かなくなるときがあり、なぜなのか知りたい」と頼まれ、“身体が重くて動きづらい”ということを通訳したり。同時に“水槽の鉢を、ここじゃないところにして”と言っていると伝えると「実は日が差すところに置いている」と、お客さまは反省されて「水槽をずらすか、日陰にする工夫をします」とおっしゃっていました。私は、熱帯魚は暗いところに置くべきだということなど、そういう知識はないので、動物から全部教わっています。変でしょう(笑)?
いろいろなお客さまがいらっしゃいます。「うちの子幸せですか」と聞かれる方から、老犬や問題行動、病気を抱えている子もいます。どちらかと言うと、問題行動や病気の犬の役に立ちたいと思っています。
動物学校での講義
先日、2週間の留学プログラムとしてハワイへ来た専門学校ちば愛犬動物フラワー学園の学生さんたちへの講義をさせていただきました。この学校は動物とペットの専門学校で、トリマーや動物看護、ドッグトレーナーを目指す学生さんが学ぶところです。
説明だけではわからないので、デモンストレーションをすることになり、ご自分のペットでアニマルコミュニケーションをしたい人を募りました。41人全員が手を挙げたので、問題行動のある子、トラウマを抱えている子、病気の子、老犬、という4点に絞りました。そこで力強く手を挙げた生徒さんがいたのですが、飼い主さんではないということでした。ご自分のペットでないと動物と飼い主さんが以心伝心できないため、通常はやらないのですが、動物関係の学校なので、みんなで犬を飼っていて、その17歳の老犬に聞いてほしいことがあると代表の生徒さんが言ったという経緯がありました。みんなが知っているならと思い、やってみることにしました。
まず、その犬に“何をしてほしい?”と聞いたときに、紐を見せたのです。生徒さんに聞いてみると、その犬は寝たきりの状態で歩けないのですが、ドッグトレーナーさんの勉強をしている生徒さんたちが紐を帯のようにして、支えて立たせてあげたというのです。それを“本当に嬉しかった。ありがとう”と言ったのです。
それから“おしっこごめんなさい。わざとやっているんじゃないんだ”と言いました。最近お漏らしをするようになって、生徒さんたちは、そのたびにクリーンナップをしているのだそうです。それを見ていていつも“ごめんなさい”と思っていたそうです。“なぜ自分の体が老いていって、お漏らしなんてしてしまうんだろう”と。生徒さんたちはみんなで「ごめんなさいじゃないよ。気にしなくていいからね。したかったら漏らしていいよ」と言って泣いていました。
もうひとつ、疲れないようにと思ってその犬を静かな環境のところに隔離したそうなのですが、“みんなの顔を見るのが好きなんだよ”と。先生は涙ぐみながら「そうだったんですね。帰ったらすぐに場所を戻します」とおっしゃいました。
実は講義をする前に、校長先生から「動物と関わる仕事をしたいという生徒は閉じこもりがちで、人間と接するのが苦手だから、動物なら大丈夫かもしれないということで入学する生徒も多い」と聞いていて「感情を表せない子が多いですよ」と言われていました。でもみんなが泣いて、笑って感動して、校長先生から引率の先生まで全員が共感できたセミナーになりました。先生たちもこんな生徒の姿を見たことがないと言ってくださいました。講義が終わっても、生徒さんたちは帰らずに、私を取り囲んでくれて「こういうときはどういうふうに思いますか」などと質問は尽きることがありませんでした。
この講義を通して、生徒さんたちに、動物にも気持ちがあるということを感じていただくことができました。獣医さんの勉強をするときに、ちょっと動物に寄り添って「もう少しだから我慢してね。がんばれ!」という気持ちを伝えれば扱いやすくなるはずだということも伝えました。
それから、プライベートで嫌なことがあったときに、授業で注射をしたりすると余計に言うことを聞かなかったり、上手くいかないこともあるから、なるべく既然とした気持ちを保つようにして接することが大切だとお話しました。
動物のうしろには人がいるのです。問題行動の原因が飼い主さんだったり、飼い主さんの波動をキャッチして犬がイライラしたり。動物を通して人が見えているんですね。