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インタビュー

【インタビュー輝く人】JTBハワイ社長 辻野啓一さん

ハワイをスポーツとエンタメの王国にしたい

ハワイのJTBは、ランドオペレーターとい って、日本からのオーダ一を受けてツアー アレンジをするのですが、ランドオペレータ ーというよりも、もっと提案してエンターテ インメント会社にしたい、お客様を喜ばせる会社にしたいと思っています。ホノルルマラソンでは、ゴールしたランナーがテントで休んで、足のマッサージをしたり、うどんを出したりするサービスをするのですが、もっとおもしるくしようとアイデ ィアを出し合いました。そこで、テントの入口で列を作って走り終えたランナーに 「おめでとうこざいます!」と盛り上げることにしたんです。最初の年はシャポン玉を飛ばして、翌年は雪を降らせました。昨年は、た<さんのバラの花びらを用意してフラワーシャワ一をしたんです。特に女性は喜んでいらっしゃいましたよ。何箱も用意したのですが、あっという間になくなりました。

 

みんなでエンターテインメントをしたら、 JTBだけ賑やかになったんですよ。私はサ ンタクロ一スの格好をして、衣装に 「JTB社長です」と書いていました(笑)。朝5時から応援して、サンタクロースに着替えてゴールしたランナーを迎える。裏地があるので、日中11時くらいになると拷問のように暑いんですが、楽しいテントになりました。

 

私はスタッフからなんでもやると思われているので、いろいるなリクエストがあるんです。一昨年くらいから元日は紋付袴を着てほしいと言われ、元日は紋付袴でお客様をお迎えするようになりました。今年創刊した 「ハワイスト」という雑誌では「社員み んなで決めたので、出てください!」 と言われ、恥ずかしいですし抵抗はあったのですが、 「オヤジと行く パウハナ・フライデー」というコーナーに出て、自分の好きなアロ ハを着て、その紹介などをしています。喜ばせるためならなんでもやりたいと思うんです。スタッフにもなんでもやったらいいと言 っています。

 

今年は5月にハワイアン・ メイというファ ッションショーをしました。7月にはアーテ イストのミーシャを呼んでライブをしました。昨年はラルク·アン ・シェルのライブでした。 スポーツは12月にホノルルマラソンがあり、1月にソニ一オープン、3月に我々のホノルルフェスティバルと、一緒に駅伝があって、5月には他社さんの駅伝があります。6月にまつりインハワイがあるというように、ハワイに行くと毎月イベントがあるようにしたいですね。ハワイをスポーツとエンタメの王国にしたいんです。

 

 

ハワイの魅力は、各島ごとに各月ごとにある

「あこがれのハワイ航路」は名曲だと思うのですが、ハワイの魅力はこの風で、ほかの国にはないものです。以前の海外旅行はいろいるなところを忙しく回っていましたが、だんだん旅のスタイルが成熟してきて、ゆ っくりしたいな癒されたいなと思うようになってきています。そうなるとハワイは非常にいいところです。ハワイというとワイキキだけだと思っている方も多いのですが、俗に言う“ハワイ8島”、それぞれの魅力があるんです。例えばラナイ島は、高地なのでまるで北欧のような魅力的なところです。ホテルもすばらしいですよ。本当はハワイを避暑地のハワイとして売りたいと思っているんです。涼しくて美しい島なので、暑さに弱いシニアの方々に来ていただきたい。ハワイの魅力は、各島ごとにあって、さらに各月ことにあるので、も っともっとそれを伝えていきたいんです。

 

アンケートで、どこに行きたいかと聞くとどの年代も「ハワイ」と答えるのですが、じ ゃあ来ているかというと来ていないのが現状です。ハワイはいつでも行けると思われるからです。でもそうではなくて、このときに来なくてはいけないハワイがあるんです。マウイ島なら1~3月はクジラです。沖ヘ出るとザトウクジラの勇壮なジャンプを目の前で見られます。ほかの時期には見られません。4~6月ならジャカランダの花が見頃です。ジャカランダは咲いているところもすばらしいですが、散った後の一面のパープルカーペットは本当にきれいです。クラという街にあるクラロッジに1本の大木があ って、それがジャカランダなのですが、そこから街道沿いにジャカランダが咲いていて、その先にはワイナリーがあるんです。それをジャカランダ街道として売りたいと思 っているくらいです。

 

日本人を呼ぶ要素として、食べ物もいいけれど、花というテーマもいいですよね。日本人は桜前線や紅葉前線があったり、水芭蕉や水仙を見に行ったりしますから。そう考えるとハワイ暦(こよみ)みたいなものがあればいいと思うんです。オアフ島のココ・クーター植物園では、6月はプルメリ アが、白だけでなく緋色、ピンク、黄色、ラべンダー、パープルなど瞭乱と咲き誇っています。みなさんが香港へ9、10月に高級な 上海蟹を食べに行くように、ハワイはいつでもいいから来てくださいではなくて、今だからこそというものを考えていくのが我々の仕事だと思っています。

 

 

ハワイに来る人がハッピーになる仕掛けをする会社に

人生の上で人と会って刺激されることが大切だと思います。最近は旅行業以外の人と会って話を聞くようにしています。各広報の人たちと異業種交流会で会うと同じ悩 みを持っていたりして、なおかつ、選ばれた人が多いので、楽しいですよ。 趣味のことで話せる人、お互いに刺激を受ける人が欲しいですね。ハワイはたくさん本を読んでいる人があまりいないのが少し残念です。映画の話も、観た後に誰かと話すことで、会話のピンポンがされていくと楽しいので、そういう人と話す時間を大事にしていきたいと思っています。

 

仕事では、スタッフと話をして育てていくことが楽しみです。広報で転勤のときに挨拶に来て「辻野さんに直してもらった真っ赤になったリリースを今でも持っています」と言われると、始めはどうなるかと思っていたスタッフが立派な広報マンになったなと涙が出てきますよ。今は自分がどうのこうのではなくて、どうやって部下を育てていくか、その人が持っているものをどうやって引き出してあげるかということを考えています。採用では、やる気さえあれば経験はいらないと考えています。昨日まで八百屋さんでも、魚市場で働いていても、やる気があってお客さんを喜ばせたいという人なら喜んで採用します。それをどう育てるかということなんです。いろいろな木がありますが、大切なのは“やる気”です。

 

向上心があって、提案をしてくれる人を求めていますし、会社はなんでも言える雰囲気にしたいですね。 会社の夢は、ハワイに来る人がハッピーになって感動して帰るような仕掛けをし続けることです。ハロウィーンやクリスマスな ど大きなイベントはもちろんですが、ブラックフライデーなどはまだ知らない人も多いので、前日の夜に出発する買い物ツアーなど、核になることを毎月、毎週のように発信していきたい。そして 「あぁハワイに行って みたい」 「また来たいね」という人を増やしたいと思っています。離島の魅力ももっと知ってもらいたいですし、やりたいことは尽きません。私自身、ハワイが大好きなんですから!

 


辻野啓一(つじの けいいち)

1952年東京都港区で生まれ、千葉県へ引っ越す。県立 船橋高校、東京外国語大学英米科卒業後、1976年に 株式会社日本交通公社に入社。研修制度の試験に受か り、サンフランシスコでの1年間の研修期間を経て、再度 のサンフランシスコ、香港、シンガポールの海外赴任と 日本の広報室勤務を繰り返し、2008年にJTBハワイ副 社長へ就任。その後社長へ。本と映画とテレビをこよなく愛する。

 


 

 

(日刊サン 2013.07.27)

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