本道佳子さん
NPO法人 国境なき料理団 代表
ビーガンレストラン「湯島食堂」オーナーシェフ
ニューヨークとロサンゼルスで料理人としての経験を積み、世界中の人が食べられる野菜食にたどり着く。「食で世界が平和になったら」という想いで国境なき料理団を立ち上げる。東京湯島にある『湯島食堂』を経営しながら、日本と世界各地を飛び回り、愛あるご飯を提供する、輝く人。
ライター:大沢陽子
食で世界を平和にしたい
毎日のごはんに愛を込める
私が立ち上げた 「国境なき料理団」というNPO法人は、食を通して世界を平和にすることを目指しています。以前、本 当に美味しい料理を作ってくださるお医者さんがいました。そのドクターのおうちでこはんをご馳走になっているときに 「あ!国境なき医師団があるのなら、国境なき料理団があってもいいのでは?」とひらめいたのです。そのドクターは今、国境なき料理団の理事をしてくださっています。
人間は毎日必ず何かを食べます。その 毎日の生活の中で、みなさんが食べるも のに愛を込めることができて、そこが愛で満たされたら、隣りの家も、その隣りの 家も、国も、果ては遠い国の国境まで超えて、その愛は広がっていくのではないかと思っています。
すべてに愛を込める ということではなく、例えばお弁当のいくつかあるおかずの中のひとっでよいのです。出来ることから少しずつ。国境なき料理団の想いは「毎日のこはんに愛を込め る」、そんな誰もができることなのです。それを伝えるのが私の活動だと思っています。
「愛を込める」というのは、食べてくれ る人のことを思い、そこにLOVEを!感謝 を!祈りを!その人らしい思いを込めていただくことだと思っています。人は食べたものでできていて、今、何を口に運ぶかで未来は素敵に創造できる。その未来は、作り手の手の中にあると言っても過言ではなく、とても重要な命をつくるお志事(しごと)なのです。
ハワイには、たくさんきれいなお花や葉っばがありますよね。それをちょっと飾ってみたり、箸置き にしたり。そういうことでもキュンとくる と思います。そうすることによって、その 人が自分のことを思ってくれているのだなというのが心にストンと入る。それが愛です。
夏休みに子どもの料理教室を開催 |
21世紀は野菜の時代
私は、あえてビーガンという野菜だけの料理を作っています。20世紀は肉や魚、乳製品やこってりしたものがご馳走 と言われていましたが、21世紀はみなさんの波動が軽くなってきているのを感じます。そんな時代だからこそ、これからは植物性の食品を多く摂るように身体が願っているのではないでしょうか。
これまで出会った世界の多国籍企業 の社長さんや映画の監督さん、クリエイ ターの方々は、ランチのあともアイデアがどんどん湧いて、仕事を進めていく方ばかりで、多くの方がベジタリアンでした。
なぜかなと思ったところ、お昼にお肉や魚を食べると消化に力を使ってしまうから、午後は眠くなってしまうのです。で も野菜は消化に多くの時間がかからないから眠くならない。そういうことを若い頃から目のあたりにしていて、発想豊かな人がチョイスする食材は植物性なの だなぁと思いました。
ひとつの提案として、1週間に1回、野菜だけでお腹いっばいになるという日を 作っていただきたい。そのために野菜だけのビーガンレストラン 「湯島食堂」を やっています。野菜にはもともと個性的な色があって、私は、その色を身体に取り込んでもらうことが、キラキラいきいきと身体が動き出すスイッチなのだと思っています。
最近は、あまり量を食べなくても、愛があって魂に響く料理だったら少ない量で満足するというところを目指しています。 これまで、お店というのはお金をいただくからたくさんの量を提供したり、お肉や魚をドンと出したりしていましたが、 もしもあまり愛がこもっていない料理だとしたらいくら食べても満たされないも のなのです。
料理人は本来、お客様の未来を作る 食を提供しているわけで、愛のある人が多いはずです。料理人たちが本当に仕事をするのであれば、あまり量を食べなくても満足するような料理を作らなくてはならない。量を出さなくちゃ、高級な ものを出さなくちゃ、ではないのです。
私は、料理人はマジシャンと同じだと思っています。なぜなら、どんな素材でも素敵に変身させることができるから。 「湯島食堂」では、今はランチを小さなコー スでお出ししています。Like this ~こんな感じ~をもじって 「 Like Dish」。お客様ご自身が、軽い気持ちで肩の力を 抜いて、新しくスタートしてほしいとの 願いを込めて。