人生のゴールを目指して
私の人生のテーマ、ホテル業に入りたいと思ったのは高校1年生でした。その後、 大学でホテル経営学を学ぶ中で見えた、自分の中で秘めている人生のゴールは、自分 のホテルを持つことです。小さくてもいいから人生の中でいっか自分のホテルを持ちたい。
これまで、どんなに忙しくても、苦しいことがあっても、今やっていることが、いっか持つ自分のホテルヘの投資だと思えば、全てが楽に思えました。1回も辞めたいと思 ったことはありません。 2006年にいただいた仕事は、ホテルを作る、開発する仕事でした。
将来に向けて、 という意味でもとても興味のある内容でした。日本の会社だったので、また日本へ帰ることへためらいもありましたが、決断をしま した。それから3年半、不動産投資会社で ホテルのプロジェクトマネージャーとして、 沖縄にホテルを建てる仕事をしました。土地の買収、許認可からデザイン、テーマを決めることまで全てに関わったのでやりがいがありました。
だた、2009年のリーマンショックで私たちのプロジェクトが一旦止まることになりました。私は不動産屋ではないので、その 状態ではやることがないと感じ、ハワイに帰って来る決心をしました。 その時にハレクラニで働かないかという 話をいただいたのです。
本当はこのタイミン グで自分の夢にまっすぐ進むつもりでした。投資家と一緒に自分のホテルを持つ方向 で動くことに自信もあったので、ここでもう 一度ホテルのマネージメントに戻ることがいいことなのかどうなのか、悩みました。
ですが、アジアのディレクターオブセールズという営業部長を新しい役職として部署と共 に構え、アジアのマーケットにしっかり目を 向けていこうというハレクラニの覚悟に心打たれ、その位躍に私を必要としてくれる ハレクラニに応えたいと思い、決めました。
ハレクラニのアジア営業部オフイスで同僚と |
ハレクラニで、多くの需要を通していろいろな角度から物事を見るという経験をし て、3年前の自分がこれだと思っていた自信 が実はワンサイドのアングルだったという ことがわかりました。ハレクラニほど、貪欲にカスタマーサーピスを謳っているところ はオアフ島ではめずらしいのです。
ここでの 経験は、ゆくゆく来るであろう自分の夢に対して確実にプラスになっています。 ハレクラニの営業は現場に非常に近い ので、営業マンではなく本当の意味でのホ テルマンになれたと思っています。
今の私 の部署のモットーは、 「本当の意味で、ハワ イで胸を張ってホテルマンといえるような 営業マンになろう。」ということです。 自分がホテルを持つという夢があるからここまで頑張ってこられたのですが、どのよ うなホテルを作りたいかというホテルの理念は漠然としていました。
でも、ここで同僚 たちと出会ったことで、自分が将来やりたいホテルの理念が明確になってきました。「真のホテルマンを育てられるようなホテルを作りたい。」これが、私が目指す将来のホテルの理念です。それには、まずは我々が真のホテルマ ンにならなくてはならない。そうなって初めて自分たちが育てるホテルマンが一流と呼ばれるようになるのだと思います。大きな ホテルは考えていません。
自分のホテルで2年、3年、5年間頑張った人はどんどん偉くなって、ハレクラニやシェラトン、ヒルトン、 ハイアット、ウェスティンなどのホテルヘと育っていってほしいです。私のホテル出身だ ったら問題ない、と思ってもらえるように。
小さいホテルかもしれないけれど、ホテル で働きたいという夢を持っている若者たち の力を発揮できる場として、私のホテルがあり、やがてハワイの優秀なホテルに行き、 優秀なホテルマン、ホテルウーマンになっていく。そのサイクルを作りたい。
自分の夢は、私がハワイにできる恩返し です。若い時にハワイでたくさんのチャンスをいただいて、今がある。だからこそ、このハ ワイの地に恩返しをしたい。いただいたチ ャンスと同じくらい、若い人にチャンスを与えたいと思います。新しいフレッシュな風を 入れていくことが、ハワイの観光業の発展にもつながる。その場を作ることが使命だと感じています。
ホテルマンが語るハワイの本質
みなさん、なぜハワイに来るのか、ハワイ の本当の魅力はなんだと思いますか?ロイヤルハワイアンホテルができたのは1927年、モアナサーフライダーは1901年、ハレ クラニの名前は1917年につきました。
ショ ッピングセンターや高層の建物がない時代からこれらのホテルがあって、そのホテル へアメリカ西海岸から船で1~2週間かけ て来て、滞在する理由、その本質はシンプ ルです。風であり、光であり、そこにもたらす景色です。
ロイャルハワイアンホテルの本館は上から見ると変わった形をしています。当時は 周りに建物が少ない時代ですから、100%海が見える建て方もできたはずですが、3分の2はガーデンを向いていて、海が見える部屋は3分の1だけです。
風の通り道を計算して作られたのが、ロイヤルハワイアンホ テルの本館なんです。そして、もともとある風景と光が差し込む方向などを考えて建てられたそうです。 船で海を旅してきた人が求めていた のは海ではないんです。
ハワイの本質は 気候であり、光であり、本当の意味での 自然です。それを堪能できれば、もっと違 うハワイを知ることができますし、それが楽しめるような旅ができる人は本当のハ ワイのリピーターになると思います。
ハレクラニというホテルは、もともとコテージだったんです。通りの名前にもある、ルワーズさんが持ってたその家は、漁師を招き入れていつでも休めるように、鍵をかけないでおいたそうです。まさにそれは今 あるレストラン 「ハウス・ウィズアウト・ア・キ ー」になっています。
また、ハワイ語で天国にふさわしい館という意味を持つ 「ハレク ラニ」は、おもてなしをもらった漁師の方々がつけた名前です。本当の意味でのハワイ アンスピリッツとおもてなし。これがハレクラニが始まった理由です。
こうした古き良き時代からずっとあるホ テルがこのような語らいをしていくべきだと思います。オーシャンビューではない空間で、紅茶を飲みながらゆったり時間を過こ す。ハワイの本当の良さを感じられる過ごし 方ですよ。
方志勲 (Chi Hoon Bang/バンジフン)
1971年韓国ソウル生まれ。小学生の時に日本へ引越し、日本 語を習得。中学1年生で単身アメリカへ留学、日本へ帰国後は 東京都のセント・メリーズ・インターナショナル・スクールでアメ リカの言葉と文化を学ぶ。その後ロンドンヘ留学し、ホテルマ ンヘの道を目指すことに。アメリカコロラド州のデンバー大学 でホテル経営学を専攻し、卒業後はハワイのロイャルハワイア ンホテルヘ就職。以来ホテル業に携わること17年。現在ハレクラニのアジア営業部長を務める。
(日刊サン 2013.04.27)