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3年ぶり、人気噺家が帰ってくる!立川談慶 独演会 in Hawaii

11月6日 午後2時〜 @パロロ本願寺

「こういう時こそ落語だよ」

 116日(日)2時から、「立川談慶 独演会 in Hawaii 」がパロロ本願寺で開催される。談慶師匠は天才落語家、立川談志一門の真打ち。慶應大学出身で、ランジェリーのトップメーカー「ワコール」でのサラリーマン経験もある異色の落語家だ。文筆家としても人気で、小説『花は咲けども噺せども』は、ラジオドラマ化もされた。

 談慶師匠がハワイで落語を演ずるのは今回で3回目である。2018年に初演。当時、ご自身も初めてのハワイで、「来た瞬間から永住したくなった」ほどのハワイ好きに。翌年はネイバーアイランドからもファンが来るほど大盛況で、ハワイ公演は定例化するものとばかり思われていた。ところがコロナ禍である。

 よっ、師匠、待ってました!!!

「ありがとうございます。私こそ、どれほどハワイ公演が待ち遠しかったことか。やっと3年越しの願いがかないます。噺家ってのは、お客さんを前にしないとしおれちゃうんです。だからコロナ禍の210ヶ月は、落語ができないストレスがオリのように溜まって、どんよりしていました。オンラインでの落語会もしていますが、別物のチャレンジです」

ライブで落語をすること、同じ空間で直にお客さんと向き合って噺しをすることは、そんなに大切なのですか?

「私はガキの小学2年の時、文集に「落語家になりたい」って書いたんです。テレビで先代の柳家三平師匠の落語を見て、憧れまして。一人の人が多くの人を笑わせてる落語家って、なんか扇子の要みたいな感じでカッコいいなあって、いっぱしにね」

親御さんが、落語のレコードを買ってくれたんだそう。

「だけどそれがお客さんなしで語るだけの、ライブ版じゃないレコードだったんです。もうぜんぜん面白くなくてねえ。落語への興味も薄れちゃった。やっぱり人間ってのは、共感が大事なんです。一緒に笑う人がいたら面白さが増幅する。お客さんと噺家が同じ空気吸って、イメージを分かち合って、面白さを半分こし合ってこその落語です」

一期一会、お客さんと創り出す

「最近よく思うんですが、自分の落語はお客さんにことばを直接届けるというより、間に置くような感覚なんです。パソコンのやりとりで、ギガファイル便ってあるじゃないですか」

大容量の情報を仮置きしておいて、相手がダウンロードできる仕組みのことだ。

「お客さんそれぞれの受け取り方で、噺しのイメージを広げてもらう。呼吸や間合いのやりとりがあってこその落語。噺家がゴールを決めるんじゃなくて、自分らはラストパスでアシストするだけ。笑いのゴールを生み出すのはお客さんです」

双方向でお客さんと創り出している感覚だ。

「お客さんが笑っているなら、笑い終わるまで待つよう呼吸を合わせるとかね。あざとくならないぎりぎりのタイミングで、落語を創っていく。まさしく一期一会です」

だから演目も、高座に上がってお客さんの雰囲気を見てから決めることが多いのだという。

「ハワイの独演会では2つ演目をやる予定です。ひとつは『ねずみ』という古典落語。もう一つは、コロナを枕にしながら、皆さんにお会いしてから決めるつもりでいます」

すごい、事前リハーサルなしの本番だ。50を悠に超える古典落語が師匠の頭にインプットされている。いや、頭だけでなく全身に落語が染み込んでいるのだろう。

コロナ禍、11冊もの本を執筆

さらに師匠の才能は落語だけに止まらない。談慶さんはコロナ禍の210ヶ月の間に、なんと11冊もの本を書いた。

「怪我の功名ですかね、落語ができない鬱憤とエネルギーを書くことに向けました」

文筆活動と落語は、談慶さんの生業の両輪、どちらのライフワークも欠かすことはできないと言う。

「落語はいたってロジカルな構成ですし、矛盾のない思考法として書くことはとても有益です。ただね、書けば書くほど落語をしたくなるんですよ。書くことは集中、落語は発散、どちらも欠かせないんです。皆さんは落語で笑うことで、コロナ禍のモヤモヤを大いに発散してください」

落語をさせてくれないコロナを題材にした本も上梓した。『安政5年江戸パンデミック』、副題に『落語家流コロナ撃退法』とある。

「幕末にコレラが大流行しました。100万人の感染者のうち20万人もが死んでしまった大惨事です。それにもかかわらず、当時の江戸では寄席が、100ヶ所から170ヶ所に倍増した。悲しくて辛くて、もうこうなったら笑うしかないという、江戸っ子の開き直り。したたかでしなやかな了見、心意気です。そういうDNAを我々も引き継いでいる。だから必ずコロナは乗り越えられるという、エッセイの名を借りた処世術を書いたつもりです」

転んでもただでは起きない処世術で書き下ろした最新刊は、『武器としての落語』。マルクスの『資本論』を落語化する、構想と台本も進めているのだという。

筋トレマニア、ベンチプレス110kg

八面六臂、大車輪のパワーはもしや、57歳にしてベンチプレス110kg のマッスルトレーニングにありますか?

「大いにあります。脳と筋肉は緊密な関係がありますから。自分は肉体言語で書いてる実感があります。毎日80kgのダンベルで10回のスクワットを4セット、ベンチプレスは110kgを今も上げます。埼玉県のベンチプレス選手権の50代の部で5位に入賞しましたからね。5人しか出場していなかったけど(笑)」

それだってすごい。

「筋トレを日常的にすれば、ぐっすり眠れて、脳はクリアになる。体の免疫力も上がります。直感力も養えますしね。直感力は最高の知性です。今の世の中、近未来の世の中の感触は直感力で獲得する。新作を完成させて、来年はハワイで現代版『落語 マルクス資本論』をやりたいなあ」

今回の独演会は、ピアニストの佐藤由美さんのミニコンサートもある多彩な趣向だ。本やCDの売り上げはチャリティーとして寄付される。

「大切な人の死を経験した時の分かち合いやサポートの援助をしている、グリーフケアのNPO「ひこばえ」に寄付をする予定です。代表の本郷由美子さんは21年前、大阪の池田小学校で起きた、無差別殺傷事件で我が子を失った被害者、お母さんでもあります」

談慶さんの落語と佐藤由美さんのピアノを楽しむ、絶好の機会。

「もういくつ寝れば、ハワイに行けるもんな!!! ウキウキですよ。ハワイの空が大好きです。朝日の空、昼間の高い空、夕焼けに染まる空、星空を仰ぐ夜空。ハワイで落語ができるなんて、最高の自分へのご褒美です。ありがとうございます! お会いできるのを楽しみにしています!」 

                                   (取材・文 奧山夏実)

(日刊サン 2022.10.28)

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