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ハワイの花鳥風月

「花鳥風月」は季節ごとの自然の美しさ表す四字熟語です。「花鳥」は花を愛で鳥のさえずりに声に耳をすます心を、「風月」は自然の風景に親しみ、楽しむ風流な心を表しています。日本の和歌や俳句の題材というイメージの花鳥風月ですが、今回のエキストラ特集では、ここハワイで親しまれている花鳥風月をご紹介しましょう。

 

アロアロ(Aloalo) ハイビスカス

 

 

 ハワイの花といえば、多くの人がまずはハイビスカスを思い浮かべるのではないでしょうか。現在は州の花として親しまれているハイビスカスですが、古代のハワイでは装飾用や薬用として葉や花が利用されていました。ハワイには約50種類が自生しており、街中ではさまざまな色の栽培品種も見られます。ハイビスカスの栽培品種の開発が始まったのは約120年前。現在では5,000種類もの栽培品種が流通していると言われています。

 

イリマ(ʻIlima)…ハワイ在来種

 ハイビスカスの一種、イリマは、ハワイ王朝時代以前より高貴なレイ・フラワーの1つとして栽培されてきました。小ぶりで黄色い花は、ハワイの神話では、フラの女神・ラカ(Laka)が化身した姿とされています。数百に及ぶ花が必要といわれるイリマのレイ、「ロイヤル・レイ」は、幸運を象るものとして旅に出立するに贈られたりすることも。ハワイ式のお葬式では、次の世界へ旅立つ死者を送り出すという意味でロイヤル・レイが使われることもあります。1923年までハワイの国花だったイリマの花ですが、現在はオアフの島花として人々に親しまれています。

 

 

 

コキオ・ウラ(Kokiʻo ʻula)…ハワイ固有種

 ハワイ固有種のコキオ・ウラは、ハワイ準州時代の1923年から65年間、ハワイ州花として親しまれていました。初代ハワイ州花の赤いハイビスカスは、しばしばハワイを連想させる花として登場します。昔のハワイ人は、自生するコキオ・ウラを、カパの染料や便秘薬、儀式の装飾品など、さまざまな目的で使っていました。また、白いハイビスカスと交配させることで、多くの栽培品種が作られました。以前は全島に自生する一般的な花でしたが、現在はカウアイ、オアフ、モロカイ、マウイ各島の標高65~895mにある森に自生しています。数が少ないため、自然にあるコキオ・ウラを観察するのは大変難しいと言われています。

 

 

コキオ・ケオケオ(Kokiʻo keʻokeʻo) …ハワイ固有種

   ハワイ固有種のコキオ・ケオケオは、古代ハワイの神話にしばしば登場する白いハイビスカスです。原産地によって種類があり、カウアイ島の固有種はワイメア渓谷など標高250~1,200mにある湿った森に自生しています。白い花弁は楕円形で、花の真ん中から出ている蕊柱は赤色です。種が輸出されたため、フロリダや西インド諸島でもよく見られるようです。オアフ島の固有種はワイアナエ山脈とコオラウ山脈にある標高350~800mにある湿った森に自生しています。カウアイ島のものに比べ、花弁がやや細長くなっています。モロカイ島固有種は花弁も蕊柱も白色。大変希少で、野生の個体はモロカイ島北部に数本あるだけなのだそう。

 

 

 

マオ・ハウ・ヘレ(Maʻo hau hele) …ハワイ固有種

 ハワイ州花として親しまれている黄色いハイビスカス。マオ・ハウ・ヘレというハワイ語の名前には「旅する緑のハウ」という意味があります。「ハウ」はビーチ周辺で見られる別の種類の黄色いハイビスカスのことです。絶滅危惧種で野生のものは希少ですが、栽培されたものハワイ州内のさまざまな場所で見ることができます。花弁・蕊柱共に黄色で、比較的乾燥した場所を好みます。

 

 

 

ハワイミツスイ

 

 ハワイの固有種群であるハワイミツスイの祖先は、北アメリカのハウスフィンチ(スズメ目 アトリ科 ヒワ亜科 マシコ属)といわれています。現在確認されているだけで、約20種類が生息しています。以前は32種類まで記録されていましたが、そのうち12種類は既に絶滅したと考えられています。種類によって、体長は10〜20cm、くちばしもさまざまな形に分かれています。赤いハワイミツスイの羽は、ハワイ王朝時代は王族しか身に着けられない特別なレイやマントの材料として使われました。1枚のマントに約3万枚もの羽が使われるため、多くのハワイミツスイが捕えられましたが、個体数を減らさないよう、必要な羽を抜いた後は森に返されていたのだそうです。

 

アパパネ(ʻApapane、アカハワイミツスイ)

【スズメ目 アトリ科 アカハワイミツスイ属 アカハワイミツスイ】

 アパパネは、ハワイ固有種の鳥としては最も多くの個体が生息し、ハワイミツスイの中では最もよく見られる鳥です。ハワイ諸島全域の森の中で観察することができます。体長12〜14cmで、雌雄同じ色をしています。胴体は赤で、頭頂部分に白っぽい羽毛が混じり、くちばし、翼、尾は茶色がかった黒。真っ白なアルビノの個体も観察されているのだそうです。幼鳥の胴体は濃い茶色で、腹の部分に白っぽい羽毛が生えています。繁殖は10〜11月から始まり、ピークは2月〜6月。オヒア・レフアの木に巣を作り、1〜4個の卵を産みます。食事は花の蜜や虫。鳴き声は「ピピーピヨヨヨ」「ピーキーチョンチョンチョン」など約16種類あり、10〜30秒間隔でさえずります。また、棲む地域によって微妙に異なるリズムや音程があります。

 

 

イイヴィ(ʻIʻiwi、ベニハワイミツスイ)

【スズメ目 ハワイミツスイ科 ベニハワイミツスイ属 ベニハワイミツスイ(絶滅危惧種)】

 ハワイを代表する鳥として、しばしばポストカードやパンフレットなどに登場するイイヴィ。体長は約15cm、オレンジがかった赤い羽と、ピンク色で大きくカーブした長いくちばしが特徴的。ロベリアなど壺型の花の蜜を吸うために長く湾曲したくちばしに進化したと言われています。尾と翼は胴体の赤色と対を成す黒色。イイヴィ・ポポロと呼ばれる幼鳥は、くすんだウグイス色にオレンジなどが混ざった斑模様で、翼部分は濃い灰色。成長も幼鳥も雌雄同じ色をしています。  標高1,000m以上の森に棲む彼らの主食はオヒア・レフアの花蜜やクモなどの虫。身体の赤い色はオヒア・レフアの花の色と被るため、天敵から身を守る保護色になっています。羽ばたく際の音が大きく、静かな環境下ではかなり遠くの方まで羽音が響きます。単体で行動することが多く、性格は攻撃的。縄張り意識が強く、他の種類の鳥を威嚇し遠ざけるなどの行動が見られます。繁殖はほぼ1年中行われ、オヒア・レフアの木に巣を作り産卵します。鳴き声は古いドアが開くような「キィィー」という音や、「ピューィー」という長い音など。他の種類の鳥の声を真似ることもあります。ハワイ島、マウイ島では観察できますが、そのほかの島ではなかなか見ることが難しいようです。

 

アコヘコへ(‘Akohekohe)

【スズメ目 ハワイミツスイ科 カンムリハワイミツスイ属 カンムリハワイミツスイ(絶滅危惧種)】

 アコヘコへは、滅多に見ることができないハワイミツスイの中でも特に希少な鳥です。体長は17〜18cmで、ハワイミツスイの中では最も大きい鳥です。胴体は光沢のある黒色で、白とオレンジ色、角度によっては金色にも見える黄色の縞模様が入っています。目は黄色がかったオレンジ色で縁取られ、首の上部には赤みの強いオレンジ色の羽毛、頭には白っぽい冠状の羽毛が生えています。幼鳥は全身が茶色がかった黒色です。  マウイ島のハレアカラ山麓、標高1,300〜2,200の森に棲み、他のハワイミツスイ同様、オヒア・レフアなどの花蜜や虫を食べます。鳴き声は「ウィーオウィーオ」、5秒間隔で繰り返される「トゥクトゥクチョロップ」などさまざま。絶滅危惧種で、現在は約3,800羽の生息が確認されています。

 

 

 

 

貿易風と コナ・ウィンド

 

貿易風(Trade Winds)

 1年を通じてオアフ島を吹き抜ける貿易風は、カラッとした涼しい肌触りが特徴。これを目当てに来る観光の方も多いのではないでしょうか。  北東の海から吹いてくるのですが、実は最初は湿気を含んでいます。風がウィンドワード(カイルア方面)とサウスショア(ワイキキ方面)の間を走るコオラウ山脈にぶつかり、雨を降らせて「脱水」します。その後乾いた風として、ワイキキ方面に吹き下ろすのです。そのため、湿気と雨が多いウィンドワードは緑がより豊かで、サウスショアは乾燥した晴天の日が多くなります。

 

 

コナ・ウィンド(Kona Winds)

 雨季になると、ハワイ島からオアフ島に少し湿った南西の風、コナ・ウィンドが吹き付ける日が多くなります。この風が吹くと湿度や気温が高くなり、小雨混じりのどんよりとした空模様に。  また、しばしばキラウエア火山の火山性ガスが原因のヴォルケニック・スモッグ(Volcanic Smog)=ヴォグ(VOG)を運んでくるため、ワイキキ周辺の空が白く霞みがちになり、さらに蒸し暑くなります。

 

 

 

月に住む女神 ヒナ

 

 

2016年11月14日に撮影されたマーヘアラニ(その月4番目の満月)。古代ハワイの人々は月の影の部分を、台(クア)の前で棒(イエ・クク)を持ったヒナが樹皮を延ばしてカパを作っている姿と捉えた。

 

 日本ではウサギが餅をついている形とされる月の模様ですが、ハワイでは月に住む女神・ヒナがカパ布を作っている姿とされています。

 ハワイの神話には、ヒナと月に関するこんな話があります。夫との生活に疲れてしまったヒナは、虹を渡って太陽にたどり着きました。しかし太陽は暑すぎたため、今度は夜の虹(ムーンボウ)を渡って月へ行き、居を構え、布を織りながら暮らすようになりました。

 

バニヤンツリー

 

 ハワイの伝統工芸であるカパ布の材料には、菩提樹の一種のバニヤンツリーの樹皮も使われます。ハワイ各島でよく見られるバニヤンツリーは、ヒナが月から落とした枝が増えたものという伝説があります。

 

ハワイの月齢カレンダー

 古代のハワイ人たちは、月の満ち欠けによるカレンダーを作ることで季節や時間を把握し、漁業や農業に役立てていました。

 

●1晩目:Hilo(ヒロ) 日が沈むと同時に西の空に細い月(二日月)が見える夜。タロイモなど地中に実る作物の収穫に向かず、大きく丸く育てたい農作物を植えることにも向いていません。海では魚が珊瑚礁に隠れているため浅瀬の釣りには向きませんが、深い海の釣りはOKです。

●2晩目:Hoaka(ホアカ) 「ホアカ」には「三日月」「霊魂」という意味があります。霊魂が影を作ることで魚が隠れてしまうため、釣りには適していません。古代ハワイでは夜の儀式が行われていました。

●3晩目:Kū Kahi (クー・カヒ)

●4晩目:Kū Lua (クー・ルア)

●5晩目Kū Kolu (クー・コル)

●6晩目:Kū Pau (クー・パウ) タロイモなどの芋類を植えるのに適しています。椰子の木は真っ直ぐ上に伸び、力強く育つ晩です。潮の流れが変わる直前の時間帯は釣りに適しています。

●7晩目:‘Ole Kū Kahi (オレ・クー・カヒ)

●8晩目:‘Ole Kū Lua (オレ・クー・ルア)

●9晩目:‘Ole Kū Kolu (オレ・クー・コル)

●10晩目:‘Ole Kū Pau (オレ・クー・パウ) 「オレ」には「非生産的・無」という意味があります。潮が満ちて海が荒れるため、釣りには適していません。作物を植えるのも控えめにした方がよいですが、ウル(パンノキ)を植えるのには適しています。

●11晩目:Huna(フナ) 「フナ」には「小さい・隠れる」という意味と「刺・角がある」という意味があります。この場合は月の角ばった部分が隠れることを意味しています。タロイモやヒョウタンなど、地中や葉の下に隠れる作物を植えるのに適しています。海では、穴に隠れるタイプの魚を釣るのに適しています。

 

http://www.pkhcc.com より

 

●12晩目:Mōhalu(モーハル) モーハルには「(花が)開く」という意味があります。モーハルの夜は、ハワイ四大神の一柱で、生命の源になる水や太陽の光や水などを司るKāneカーネ(神)にとって神聖な晩。この日は魚、海藻、果物を食べるのは避けます。バナナ、ヒョウタン、タロイモなど、この晩の月のように大きく丸く育てたい農作物を植えるのに適しています。

 

収穫されたタロイモ

 

●13晩目:Hua(フア) 「フア」には「卵・種・果物」という意味があります。満月に近づきつつあるこの夜の月は卵のような丸みを帯びています。農業に関する気候を司る日とされ、豊饒と農業の神・ロノにとっての神聖な夜。陸でも海でも、豊かな収穫が期待できます。古代のハワイでは満月は4晩続くとされており、フアが1晩目になります。

●14晩目:Akua(アクア) 「アクア」は「神・女神」を意味するとともに「悪魔・死体・偶像」という意味もあります。2晩目の満月で、釣りに適しています。古代のハワイでは、多くの食物が手に入るように祈りながら神々に捧げ物をする夜でした。

●15晩目:Hoku(ホク) 3晩目の満月の夜。日の出の前に沈んだ場合は「沈んだ星」を意味するHoku Palemo(ホク・パレモと呼ばれ、日の出の時に出ている場合は「取り残された星」を意味するHoku Ili(ホク・イリ)と呼ばれました。 農作物を列状に植えるのに適しています。

●16晩目:Māhealani(マーヘアラニ) その月最後の満月の夜。潮の流れは強く、月は日の出の後まで出ています。農業、漁業を始め、全てのジャンルの作業に適している日です。古代ハワイのマーヘアラニの夜は、男性がバナナを植える習慣がありました。

●17晩目:Kūlua(クールア) クールアの月は、日が沈んで暗くなってから出てきます。収穫した農作物を神々に捧げる日。潮の流れは強いですが、釣りには適しています。

●18晩目:Lā’au Kū Kahi(ラーアウ・クー・カヒ)

●19晩目:Lā’au Kū Lua (ラーアウ・クー・ルア)

●20晩目:Lā’au Pau(ラーアウ・パウ) 「ラーアウ」は「植物」を意味します。ヒョウタンなどの植物の蔓は硬くなり、パンノキなどの実の成る木を植えると実が硬く実ってしまうため避けた方が無難。それ以外の植物を植えるのはOKです。薬草を採るのにも適しています。

●24晩目:Kāloa Kū Kahi(カーロア・クー・カヒ)

●25晩目:Kāloa Kū Lua (カーロア・クー・ルア)

●26晩目:Kāloa Pau (カーロア・パウ) オレ・パウにから引き続き、カナロアにとって神聖な夜。竹、バナナ、サトウキビなどの長い作物と、サツマイモやヤムイモなど蔓のある作物を植えるのに適しています。釣りに向いていますが、特に貝やエビなどの甲殻類の釣りにベストな日です。

●27晩目:Kāne(カーネ) 夜明けに出てくる月。万物の根源、生命の神であるKāneカーネと、健康を保ち、食物が安定して手に入るよう、農耕と豊饒の神・ロノの崇拝に集中する日です。

●28晩目:Lono(ロノ) 夜明けの始まりに出てくる月。引き続きカーネとロノを崇拝しますが、この日は恵の雨がもたらされるよう祈ります。

●29晩目:Mauli(マウリ) 日の出と同時か、その直後に出てくる月。潮が引くため、釣りに適しています。結婚式にも向いている日です。

●30晩目:Muku(ムク) 日中に出る月。釣りに向いています。

 




【参考URL】2020年2月3日アクセス

○ 崎津鮠太郎(2020)「ハイビスカス まとめ」https://www.anuhea.info/plants-flowers-hawaii/hibiscus.html

○ 崎津鮠太郎(2020)「ハワイの野鳥」https://www.anuhea.info/birds-hawaii.html

○「ハワイ雑学|ワイキキの風はどこから吹いてくる?」 https://family-hawaii.net/blog/tradewind_hawaii/ ○Hawaii Nature Explorers「ハワイの月齢と暦」 http://hawaii4u2c.com/2006/10/09/ハワイの月齢と暦/ ○Native Plants Hawaii http://nativeplants.hawaii.edu/index/

○“Native Hawaiian Forest Birds of Hawai’i Volcanoes National Park” https://www.nps.gov/im/pacn/havo-native-birds.htm

○Duane Choy (2005)“Hawaiian way is to let moon guide planting” https://www.cds.hawaii.edu/kahana/downloads/curriculum/SectionII/Unit5/5.A.Kalo/5.A.4.MoonPlantingActivity.pdf

○Prince Kūhiō Hawaiian Civic Club http://www.pkhcc.org (2012) 

【画像出典】 Public Domain, Wikipedia, Pixabay, Shutterstock 他

 

(日刊サン 2020.2.8)

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