何かを調べたり、人とコミュニケーションを取ったり、買い物をしたりと、今や私たちの生活に欠かせないインターネット。とても便利な一方、仕事や家事など、日常生活でしなければならないことよりもインターネットを優先したり、1日のほとんどをオンラインで過ごしてしまう「インターネット依存症」が世界中で問題になっています。インターネット依存症とは、FacebookやtweeterなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や、オンラインゲーム、YoTubeなどの動画配信など、インターネットを介した何かのサービスへの依存のことをいいます。今年最初のエキストラ特集では、インターネット依存症の症状や予防法、ご自身の依存度をチェックできるテストなどをご紹介しましょう。
※この記事では「インターネット」について、スマートフォンやタブレットのアプリケーション、PCで使えるWebサービスなど「オンラインでできるすべてのこと」として書いています。
インターネット依存症の症状
インターネット依存症が懸念され始めたのは、今から24年前の1996年のことでした。その年、アメリカの心理学会でピッツバーグ大学のキンバリー・ヤング博士が「インターネット依存」という概念を提唱したのです。そして、依存の程度を判定するテスト「インターネット・アディクション・テスト(IAT)」を発表しました。
IATには20項目があり、インターネットの「正常な長時間の使用」か「病的な長時間の使用」かという判定をすることもできます。そのうち「病的な使用」に関する項目(症状)はおよそ次のようになっています。
◆インターネットの時間を増やすため、家事、仕事などをおろそかにしている。
◆インターネットをしている時間が長いため、学校の成績や学業に支障をきたしている。
◆「インターネットで何をしているのか」と人に聞かれたとき、していることを隠そうとする。
◆日常の心配事から気持ちをそらす目的でインターネットをしている。
◆インターネットの最中に誰かが邪魔をすると、イライラしたり怒ったりする。
◆睡眠時間を削ってまでインターネットをしている。
◆インターネットの時間を減らしたいが、できない。
◆インターネットに費やした時間の長さを隠そうとする。
◆インターネットをしていない間は気持ちが落ち込んだりイライラしたいりと、ネガティブな気分になるが、インターネットを始めると気持ちが落ち着く。
インターネット依存症かも?と思ったら
もし、ご自分やお子さまが「インターネット依存かもしれない」と思ったら、まずはインターネットをどのように使っているかを客観的に把握することから始めてみましょう。依存している人の環境や状況を理解することで、依存の深刻度や脱却する方法を決めやすくなります。また、下記の「インターネット依存度テスト」を行い、参考にしてみてください。
把握すべきことの例
◆どのアプリやサービスに熱中しているか。ゲーム、SNS、動画配信サービスなど。
◆コンテンツを見るだけか、自分でコンテンツを発信しているか、その両方か。
◆それぞれのサービスに費やしている1日あたりの時間。
◆他人と一緒に熱中しているか、それとも1人か。
IAT:Internet Addiction Test インターネット依存度テスト
<参考>久里浜医療センター https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/iat.html
インターネットに関する以下の質問にお答えください。この場合、利用する機器は、パソコン、携帯電話、スマートフォン、ゲーム機などオンライン使用の全てを含みます。1~20の各質問について、次の5段階の答えの中から最もあてはまる答えを選び、点数を合計してください。自分に該当しない質問であれば「全くない」を選んでください。
全くない(1点)/まれにある(2点)/ときどきある(3点)/よくある(4点)/いつもある(5点)
1.気付いたら思っていたよりも長い時間インターネットをしていることがありますか。
2.インターネットをする時間を増やすため、家庭での仕事や役割をおろそかにすることがありますか。
3.配偶者や友人と過ごすよりも、インターネットを選ぶことがありますか。
4.インターネットで新しい仲間を作ることがありますか。
5.「インターネットをしている時間が長い」と周りの人から文句を言われたことがありますか。
6.インターネットをしている時間が長いため、学校の成績や学業に支障をきたすことがありますか。
7.他にやらなければならないことがあっても、まず先に電子メールをチェックすることがありますか。
8.インターネットのために、仕事の能率や成果が下がったことがありますか。
9.人にインターネットで何をしているのか聞かれたとき防御的になったり、隠そうとしたことがどれくらいありますか。
10.日々の生活の心配事から心をそらすためにインターネットで心を静めることがありますか。
11.次にインターネットをするときのことを考えている自分に気がつくことがありますか。
12.インターネットの無い生活は、退屈でむなしく、つまらないものだろうと恐ろしく思うことがありますか。
13.インターネットをしている最中に誰かに邪魔をされると、いらいらしたり、怒ったり、大声を出したりすることがありますか。
14.睡眠時間を削り、深夜までインターネットをすることがありますか。
15.インターネットをしていないときでもインターネットのことばかり考えていたり、インターネットをしているところを空想したりすることがありますか。
16.インターネットをしているとき「あと数分だけ」と言っている自分に気がつくことがありますか。
17.インターネットをする時間を減らそうとしても、できないことがありますか。
18.インターネットをしていた時間の長さを隠そうとすることがありますか。
19.誰かと外出するより、インターネットを選ぶことがありますか。
20.インターネットをしていないと憂うつになったり、いらいらしたりしても、再開すると嫌な気持ちが消えてしまうことがありますか。
合計( )点
合計点が高いほど依存の度合いが強くなります。
【20~39点】平均的なオンライン・ユーザーです。
【40~69点】インターネットによる問題があります。インターネットがあなたの生活に与えている影響について、 改めて考えてみましょう。
【70~100点】インターネットがあなたの生活に重大な問題をもたらしています。専門機関で治療を受けることを お勧めします。
インターネット依存による身体的・精神的・社会的実害
①健康への害
視力障害……スマホ近視、スマホ老眼など
首……テキストネック、ストレートネック、スマホ首など
肩や腕……スマホ巻き肩、スマホ肘など
指……指の腱鞘炎や、スマホを支える指の骨が変形するなど
睡眠障害……長時間使用することによる生活リズムの乱れによるもの
集中力の低下……睡眠障害によるもの
②学習能力や運動能力の低下
学習能力の低下……(インターネットの長時間使用による)
学習時間の減少や集中力の低下
運動能力の低下……運動時間の減少
言語能力の低下……コミュニケーションを取る機会の減少
③注意力の低下が原因の事故や負傷
交通事故……運転中や歩行中のスマホ操作によるもの
駅ホームからの転落事故など……「歩きスマホ」「ながらスマホ」によるもの
④コミュニケーション障害
強迫観念、誹謗中傷、ネットいじめなど……SNSの利用によるもの
感受性や社会性の低下
鬱状態や攻撃性の発現
親子関係や友人関係の希薄化
⑤金銭トラブル
ショッピングサイトの後払い利用による支払い滞納 アプリやオンラインゲームの高額請求
架空請求サイトからの詐欺被害
⑥犯罪の加害・被害
犯罪の予告や勧誘など
SNSで自分が行った犯罪や迷惑行為をさらす
援助交際や金銭の授受……有害サイトへのアクセスによる
画像、動画配信による被害……個人が特定されるものやストーキング、リベンジポルノなど
個人情報の漏えい
MEMO
スマホを持たないと 不安になる「スマホ依存」
最もインターネット依存に陥りやすい媒体は、持ち歩きが容易なスマートフォンと言われています。もしiPhone などのスマートフォン(スマホ)をお持ちなら、スマホを持たないと不安や焦りを感じたり、ゲームやSNSなどで長時間費やしていないかどうかを改めて考えてみましょう。
インターネット依存 予防のポイント
インターネット依存の最新情報を把握する
さまざまなある依存症の中で、認識されて日が浅いインターネット依存。今後のエビデンスの蓄積で様々な状況の変化が起こりうる依存症です。依存症について常に最新の情報を把握し、予防意識を更新するようにしましょう。
利用状況を定期的に省みる
「ちょっと時間が空いた時はいつもスマホでSNSやWebサイトをチェックしている」、「寝る前に数分だけのつもりでゲームを始めたが、気付いたら1時間以上も経っていた」など、インターネット依存のとっかかりは、これらのような目的意識がなく惰性的にインターネットを利用する癖が背景にあります。予防のため、スマホやタブレットを使用する時は、できるだけ使う目的や時間を決めてからにするとよいでしょう。
ルールを決める
子どもにインターネットに接続可能なデバイスを渡す際は、親子で納得できるルールと、ルールを守れなかったときのペナルティを決めてからにしましょう。特にルールを守れなかった際にペナルティを課すことは重要です。これを曖昧にしてしまうと子どもが「ルールを守らなくても大丈夫」と考えてしまい、その後のデバイス利用に歯止めがかからなくなる恐れがあります。
家族や親子一緒にルールを守る
ルールは親子で守れるものにし、一緒に取り組んでみましょう。例として、食事の時にスマホを触らない、夜9時以降は触らず、家族のデバイスを同じ場所に置いておくなど。子どもと一緒に取り組むことで、ご自身のインターネット依存も予防できます。
子どもの利用状況を把握する
インストールされているアプリや、友だちとのやり取りなど、子どもがインターネットをどのように利用しているかを把握しましょう。これによって、子どもの利用状況にどのような潜在的リスクがあるか、トラブルの際の解決の糸口が見つかりやすくなります。頭ごなしの否定や禁止は避け、子どもがどんな目的意識を持ってサービスやアプリをを利用しているのか理解することが大切です。
インターネットのない環境に身を置く
意識的にインターネットのない環境に身を置くことは、サイバーデトックス、デジタルデトックスとも呼ばれています。週末に家族全員が使わないというルールを決めて外出したり、電波の届かない場所へハイキングに行ったり、デバイスを持たずに散歩をしたり。デトックスの間、ご自身や子どもがスマホなどが気になって落ち着かなかったり、子どもがしょっちゅう携帯を使いたがるといったことがあれば要注意です。意識的にインターネット以外のアクティビティをするようにし、様々なことに興味を向けられるようにしましょう。
MEMO
インターネット依存に関するさまざまな統計
・WHO(世界保健機構)は、ゲームのやり過ぎで日常生活に支障をきたす症状を正式に「疾病」と定義しています。
・平均的なインターネットユーザーは、SNSに1日平均2.15時間を費やしています。
・平均的なスマホユーザーは、を1日150回、6分30秒毎にスマホをチェックし、デバイスのタップ、スワイプ、クリックの平均回数は1日に2,617回です。
・18歳〜34歳のほぼ半数が、SNSのフィードを見て「自分は魅力的ではない」と感じています。
・ある実験で、ストレスを感じている人や不安、鬱状態にある人がデジタル・デバイスを持たずに外出したら、95%の人がよりバランスのよい穏やかな気分になったという結果が出ました。
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【上表】パソコンのネット利用時間とモバイルのネット利用時間の推移(場所別・10代)
参考:「FACT データから見る事実」https://digitaldetox.jp/digitaldetox/
出典:総務省情報通信政策研究所「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
(日刊サン 2020.1.21)
【参考URL】2020年1月15日アクセス ◇「インターネット依存とは」https://www.ask.or.jp/article/ネット・スマホ依存/ネット・スマホ依存を知ろう/インターネット依存とは ◇「ミレニアル世代の情報行動」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111310.html ◇「FACT データから見る事実」https://digitaldetox.jp/digitaldetox/ ◇Christina Gregory, PhD(2019)“Internet Addiction Disorder” https://www.psycom.net/iadcriteria.html ◇Psych Central Research Team(2004)“Are You Addicted to the Internet? Quiz”. https://psychcentral.com/quizzes/internet-addiction-quiz/ ◇Shubham Agarwal (2019). “How I Cut My Smartphone Usage in Half: 8 Changes That Worked”. https://www.makeuseof.com/tag/cut-smartphone-usage-changes/ ◇画像出典 : Pixabay, Shutterstock