男の子が生まれたら“遼太郎”と名付けるつもりだった、と言われた。それほどまでに作家・司馬遼太郎が好きな母の影響を受け自分も読むようになり、“燃えよ剣”は中でも一番のお気に入りだ。
1853年アメリカから派遣されたペリーの来航により開国、200年以上続いてきた江戸幕府、徳川家の統治が揺らぎ始めた動乱の世。現在の東京都日野市の農家に生まれた土方歳三は、幼い頃から剣術に励み武士になる野望を抱いていた。転機が訪れたのは28歳の時。将軍の警護をする浪士組を募集するというので仲間の近藤勇、沖田総司らと共に京都に上り、新選組の結成に至る。
土方歳三役が岡田准一で良かった…と正直胸をなでおろした。新選組及び彼のファンにとって、誰が演じるかというのはとてつもなく重要な問題なのだ。函館では毎年男女問わず仮装して参加できる“土方歳三コンテスト”まであり現代においてもその人気は健在で、現存している彼の写真を見れば言わずもがな、涼しい目をした男前なのである。映画化するなら顔が良いだけではなく、武士道を貫き漢らしさも兼ね備えた気骨ある人をと願っていた。貫禄ある局長近藤勇や美少年で知られている沖田総司含め、原作からのファンもそれ以外の方も納得出来る配役であったと思うし、1人1人の人物像が丁寧に作り込まれていて江戸時代末期の時代感に没入できた。さらに、時代劇というとお堅くある程度知識が必要と思われがちだが、わかりやすく時系列や出来事が説明されているので肩肘張らずに観られるのも良い。
全てが変わったといって過言ではない、日本の歴史の中でも最大の転換期といえる幕末。髷を切り、洋装にはしたが遥か遠く箱館(函館)の地まで北上し、最期まで武士として旧幕府軍を率いて明治政府と戦い続けた土方歳三の生き様にきっと心打たれるはず。
司馬遼太郎作品では“新選組血風録”という短編集もあり、故・大島渚監督が“御法度”というタイトルで映画化している。別視点で新選組が描かれているので興味ある方はぜひ。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/函館五稜郭はもちろん、京都の壬生寺や東京の高幡不動尊など新選組ゆかりの地を巡りましたが、行きたい場所はまだまだあります。
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