19歳のハワイモンクアザラシ「ケコア」、シーライフパークで新生活開始
19歳のオスのハワイモンクアザラシ「ケコア」が、オアフ島ワイマナロのシーライフパークで新生活を始めたとホノルルスターアドバタイザーが報じている。
ケコアは約10年間、ハワイモンクアザラシの生理学研究の対象として「KE18」と呼ばれていた。しかし近年、野生での暮らしが困難になっていたという。ケコアは9月30日、シーライフパークの岩で囲まれた屋外プールに移送され、2日朝に一般公開された。
米海洋大気庁(NOAA)海洋哺乳類健康座礁対応プログラムコーディネーターのデビット・スコフィールド氏は「研究者たちがケコアの聴覚や代謝を研究したことにより、絶滅の危機に瀕しているハワイモンクアザラシについての知識をより深めることができた」と話した。
現在、野生のハワイモンクアザラシは約1,400頭が確認されている。そのうち約1,100頭がハワイ諸島北西部に、300頭がハワイ諸島の主要な島々に生息しており、米連邦法及びハワイ州法の下で保護されている。
ケコアはハワイ諸島北西部のクレ環礁で誕生したが、成獣になってからは子どものアザラシに対して攻撃的な行動を示すようになった。これはオスのアザラシによく見られる行動であり、通常、歳を取るに比例して攻撃性は収まっていくという。しかしケコアの攻撃性は強まる一方で、2011年には2頭の子アザラシを殺し、7頭の子アザラシに攻撃的な振る舞いを見せた。
他のハワイモンクアザラシを保護するため、NOAAは一旦ケコアの安楽死を決定したが、その後しばらくの間、ケコアを発見することができなかったという。ケコアを探す間、当局では安楽死の代わりに別の計画が立てられていた。ケコアを見つけ次第、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のロングマリン研究所に移送することにしたという。この計画には、研究所での研究が終わり次第、ケコアをハワイのシーライフパークに移すことも含まれていた。
研究終了後の今年5月、米国務省はケコアをハワイに移送することを許可した。カリフォルニアでケコアを担当していた獣医助手のボー・リヒター氏は「飼育下に置かれたケコアは、とても穏やかで優しい性格になった。野生の状態では攻撃的だったアザラシなどの海獣は、人間に飼育されるようになると性格や行動が変化する傾向にある」と話した。
シーライフパークの獣医、ベス・ドッシャー氏は次のように説明した。
「ケコアは健康な状態で、スタッフらはケコアに新しい環境に慣れてもらうよう努力しているところです。ハワイモンクアザラシは社会的な行動を取る動物ではなく、繁殖などのために集まることはあるものの、集団で眠ったりすることはありません。アザラシの単独生活は珍しい状況ではなく、中には単独でいることを好むアザラシもいると考えられています」。
写真:Jeff Whyte / Shutterstock.com
(日刊サン 2021.10.04)
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