歌の力 カンザス州
2019年11月のベテランズ・デー(退役軍人の日)の出来事だ。
カンザス州にあるミッション・トレイル中学校のコーラス部の生徒たちおよそ30人は、地元の高齢者施設を慰問して歌を歌うことになっていた。
その途中で昼食のためにピザ・レストランに立ち寄った時に引率していたコーラス部のテレサ先生は1人の老人が退役軍人の帽子をかぶっていることに気がついた。
82歳のロイ・ブラックバーンさんはホスピスに入院していたのだが、ベテランズ・デーのお祝いのためにピザを食べたいと外出中だったのだ。
テレサ先生は、生徒たちに「彼のために国歌を歌いませんか?」と聞いたところ、すぐにみんなが賛同してその老人に向けてアメリカ国歌を歌い始めた。
歌が始まった途端にその老人は酸素呼吸器をつけている状態にもかかわらず直立して帽子をとって胸に当て、子供たちの歌う国歌を聞いた。
そばにいた妻のキャロルさんとともに涙を流していたという。
そして3カ月後の2020年2月にロイさんは亡くなったのだが、その葬式でミッション・トレイル中学校のコーラス部の生徒たちは、歌を歌ってもらいたいと頼まれたのだ。
海軍での任務の後、消防隊員として20年以上ジョンソン郡で働いたロイさんのために敬意を表して、子供たちは歌を歌ったとフォックス・ニュースが伝えている。
テレサ先生は「誰かの人生に大きな影響を与えることができると子供たちに教えてきましたが、今回のことで子供たちは本当にそれを理解できたと思います。いつでも何かポジティブなことをすることが大切です。誰かのために歌を歌うというシンプルなことだとしても、人を感動させられるのです」
写真 : Shutterstock.com
(日刊サン 2021.08.09)
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