某カルト教団のセミナーに敢えて参加、家の天井に“エイリアン”のフィギュアをぶら下げて皆を驚かせる、など息を吐くように奇行を繰り返す先輩が身近におり、全くやれやれ、なのだが周囲を大いに楽しませてくれている。
30年前。20代の若者アッシュは姉のシェリルや恋人のリンダらと5人でフロリダ州ジャクソンビルへ向かう途中、宿泊した山荘で偶然“死者の書”を見つけ古の悪霊を呼び覚ましてしまう。悪霊に憑りつかれた友人たちが襲い掛かってきたため止むなく殺して以来、各地を転々として現在は量販店で働き平穏に暮らしていたのだが、ある日うっかりと悪霊を封印から目覚めさせてしまい、同僚のパブロとケリーを巻き込み再び対峙することに…。
一言で表すなら、『いい歳をした大人の真剣な悪ふざけ』。各話どれを見ても必ず「うそ、信じられない!」と斬新な驚きとともにクスッと笑わせてくれる、ホラーではあるもののコメディ要素と上手くバランスが取れたクオリティの高い作品。ゾンビのような恐ろしい敵を相手にしても、アッシュがいれば大丈夫!右腕にはめた自慢のチェーンソーで、流れ作業のようにバッタバタとなぎ倒していく様は痛快だ。元々の映画“死霊のはらわた”(1981)ではCG無しの死体描写や死者の書自体が妙に生々しくそれも見どころだったが、ドラマシリーズは終始イタズラ心に満ちていて、これぞアメリカンジョークの真髄、と惚れ惚れした。本家よりもさらにパワーアップした主人公アッシュの、他に追随を許さないユーモアのセンス、一見ダメ男かと思いきや不思議と頼りがいのある魅力をぜひ堪能してほしい。ただし、時折性、人種差別などセンシティブな問題に触れており、きちんとフォローは入っているが年齢制限もあるため要注意。
件の先輩はどことなくアッシュを彷彿とさせるので本作を勧めておいた。なお、彼の名誉のために言っておくと悪ふざけばかりでなく人知れず寄付やホームレスの方々への物資援助もしている善良な大人なのだ。一応。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問国は39ヵ国~の旅する映画ラヴァー/本作を製作したサム・ライミ監督プロデュースの新作“The Unholy”が公開されており楽しみです。こちらコメディ要素はなさそうですが…。
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