日本の医療制度に「AI問診」を導入
日本は国民皆保険制度を実施している国であり、そのため全ての国民は誰でも、平等に、何時どの医療機関にも安心して、医療サービスを受ける権利をもっている。この様な医療制度が整っているためなのだろうか、日本人の平均寿命は、世界的に長寿国という栄誉に名を連ねている。
勿論、この完璧に近い医療制度により、国民の健康と生命に多大な恩恵をもたらすことは出来たが、医療費の負担は国民全員の保険料の負担によって賄われている。ところで、毎年の医療費は膨大に膨れ上がり、各医療機関の患者も増える一方である。
そこで、医療機関への予約診療制度があるにもかかわらず、超人気店のような“満員御礼”の混雑状態が続き、医者に診察してもらうのは「何時間も待って、診察はたった数分」という状態が多くの医療施設において続発しているのである。
この様な状態を改善する必要性から、医療機関の「AI問診」が生まれたのであった。東京のベンチャー企業「ユビー社」は2017年に、日本人の生活習慣に基づく医療の論文約5万件をAIに読み込ませ、主な症状から既往症、飲酒や喫煙歴などを記録し、患者の詳しい症状を把握できるシステムを作り上げた。
そしてこの日本人用の「AI問診」を2018年8月に山形県にある日本海総合病院に初めて導入した結果、予期した効果を得ることが出来たのである。現在では全国41都道府県の約200の医療機関が同社開発のこのシステムを利用するようになった。
実例を挙げると、去年1月にこのシステムを導入した岡山旭東病院では、同月の初診患者1日約60人の病院平均滞在時間は、導入後約21分減少になったというのである。
一方、2019年12月にこの「AI問診」システムを導入した済生会京都府病院では、患者に対する追加の聞き取りが減ったことで、外来患者対応の看護師10人のうち、2人を病棟配置に転換することが出来たというのである。
この「AI問診」システムを開発した「ユビ―社」によると、今ではこのシステムを活かし、無料で誰でも診断が出来る「AI受信相談ユビ―」の専用サイトを、この4月から始める予定であるという。利用者はこの無料「AI問診」で参考病名を知らされた後、必要があれば周辺の適切な医療機関も知らせてもらうこともできるというのである。個人情報等は一切登録する必要はなく、安心且つ極めて便利に利用できるというのである。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.202
早氏 芳琴