日刊サンWEB|ニュース・求人・不動産・美容・健康・教育まで、ハワイで役立つ最新情報がいつでも読めます

ハワイに住む人の情報源といえば日刊サン。ハワイで暮らす方に役立つ情報が満載の情報サイト。ニュース、求人・仕事探し、住まい、子どもの教育、毎日の行事・イベント、美容・健康、車、終活のことまで幅広く網羅しています。

デジタル版・新聞

My Destination

プロレス同好会

プロレス同好会

(前回まで) 「世界をまたにかけて働く」ことを幼少からの夢としていた私は、意と反して損害保険会社に入社。順風満帆な生活を送っていたが、会社が急きょ経営破たん。その後の人生を切り開くために渡米しMBAを取得。その後メガバンク勤務を経て、新たなライフワークに取り組むため、渋谷にあるベンチャー企業の門を叩いた。

 

 会社によっては、福利厚生の一環で社内のクラブ活動やサークル活動に力を入れているところがある。一番最初に勤務した損保会社では「釣り部」が盛んで、損保業界のリーグ戦でしばし優勝していた。ベンチャー企業では、ある意味色々なことが比較的自由に行われているのだが、わが社ではなんとプロレス同好会が飛ぶ鳥を落とす勢いであった。

 会社に入社して2週間程度たったある日、たまたま社長からランチに誘われた。上司の常務と経理部長も同席した。その席で、「最近、会社にプロレス同好会みたいなものが出来たんだよな」と社長が口にしたのが発端。常務もその存在に感づいていたし、アントニオ猪木を心の師と仰ぐ経理部長に至っては、その同好会の幹部に収まっていた。そして、その場で私も幼少からプロレスが好きだったことを告白すれば、経理部長が同好会幹部に話をつけ、数日後には私も三顧の礼で同好会に迎え入れられたのであった。

 ITベンチャーらしいといえばそうなのだが、この同好会の会員には同好会の代表から定期的にメルマガが配信された。そしてその内容がこの上なく面白い。会員のプロレスに対する熱い思いもあれば、プロレスに関する小話など愛好者には堪らない内容となっており、会員は次のメルマガを一日千秋の思いで待ち望んでいた。

 この同好会のすごさは、会員が社員に限らず社外に及んでいたことだ。代表は営業マンで、その上司の営業部長もプロレス好きで同好会の幹部であったことが大きい。このメルマガの面白さに目を付けた営業部長が、取引先でプロレスに関心がある人を見つけたら即このメルマガ購読を薦めたものだから、会員は取引先中心にあっという間に膨らんだ。そうなると、社長や営業担当専務の耳にも「御社のプロレス同好会、すごい盛り上がっているようですね」と頻繁に入るようになり、プロレス同好会を公認せざるをえない状況となったのである。

 勢いというものは時として通常では考えられないことを起こすこともある。私が加入してから半年ほど経った頃、当時まだ新人だった新日本プロレスの高橋裕二郎選手を紹介され、その日以降、同好会をあげて裕二郎選手を応援することとなった。年に数回は裕二郎選手を囲んでの懇親会を開き、親交を深めた。

 ある日、私の埼玉の実家にて、プロレス同好会のBBQパーティを行った。その時裕二郎選手はチャンピオンとなっており、チャンピオンベルト持参で我が実家を訪れ、プロレス好きだった父の位牌に手を合わせてくれたのだった。

 このようにベンチャー企業の気風とかいろいろな偶然と必然が重なって発展することが出来たプロレス同好会であるが、この同好会は今日でも活動しており、この会社を既に退職した私も継続して会員であり続けている。そして、当然ながら裕二郎選手とも個人的な親交は継続している。そのことが、私が米国駐在時に大きな強みとなって表れたのだが、その話は披露するのはずっと後になるだろう。

(次回につづく)

No. 180   第3章 「再挑戦」

Masafumi Kokubo

1995年中央大学法学部卒。損害保険会社勤務後、アイオワ州の大学院にてMBAを取得。その後、メガバンク、IT企業を経て、現在はグローバル企業にて世界を相手に奮戦中。趣味はサーフィンとラクロス。米国生活は通算7年。

シェアする

返信する

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
Twitter
Visit Us
Instagram