ワシントンプレイスの祝賀に5.3万ドル予算
ベレタニア・ストリート320番地にある17部屋からなる美しい2階建ての白亜の邸宅は3エーカーの土地に緑が生茂る庭に囲まれている。
ワシントン・プレイスと呼ばれるこの邸宅はもともと裕福な貿易商で船長であったジョン・ドミニス氏の家として1846年に建設されたものだ。
その後ドミニス氏の未亡人と息子のジョン・オーウェン・ドミニスの所有となって、アメリカ初代大統領の名前から取ってワシントン・プレイスと名づけられた。そしてそのジョン・オーウェン・ドミニスは、のちにクイーン・リリウオカラニとなるリンディア・カマカエハと1862年と結婚し、1868年にはキング・カメハメハ5世によってオアフ知事に任命された。
1893年にハワイ王朝の転覆とともにイオラニ宮殿から追放されたクィーン・リリウオカラニはワシントン・プレイスに移りそこに55年間住んで、1917年に亡くなっている。
ワシントン・プレイスはその後ハワイ州が買い取り、ハワイ州知事の官邸でもあったが、今から20数年ほど前に博物館となり、州の公式行事などが行われる場所となっている。
そのワシントン・プレイスは今年で建設から175年となるため、その175周年祝賀予算として、デービッド・イゲ知事は53,000ドルを計上し議会に承認を求めているとホノルル・スター・アドバタイザーが伝えている。
新型コロナウィルス感染によりハワイ州経済が大打撃を受けた影響で税収入が激減し、州政府はこれまでにない財政危機に瀕している今、この税金の使い道はどうなのか。
確かに今年7月1日から始まる新しい会計年度の全体予算154億ドルの中で、53,000ドルという金額は取るに足らないほど小さなものかもしれない。
しかし、今後4年間で毎年14億ドルの歳入不足を補うために、州職員の仕事やプログラム、市民サービスなどを大幅に削減しようとしている中で、このような支出を求める感性が疑われると議員から疑問の声が上がっている。
下院議会の財政委員会のメンバーであるリサ・マーティン議員は「新型コロナウィルス感染の中で人々が集まれない状況の中、一体どんな祝賀が計画されているのか?」と議会で詰め寄った。
イゲ知事側からは、予算の半分の26,000ドルはワシントン・プレイスの歴史に関する記念出版物の印刷費で、2万ドルはDVD、写真、ビデオなどを用いたバーチャルの展覧会費用、5,600ドルはウェブでのセミナー費用、1,500ドルは記念のピンブローチ作成費用であるとの回答だが、まだ詳細が最終決定したわけではないと述べている。
写真:Editorial credit: Jeff Whyte / Shutterstock.com
(日刊サン 2021.1.25)
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