「コロナ禍」が 日本の伝統的接客を変える?!
日本の対人販売においての伝統的な形態は、終始笑顔を維持し、心尽くしの接客態度と儀礼に満ちた応対の言葉使いにある、と言われてきた。特に外国の訪日客が日本のデパートでの買い物などをする時、店員からの誠心誠意ある言葉使いと接客態度に強く感銘を受ける。それは彼ら訪日客にとって忘れることのできない、心うたれる語り草となっているようである。
ここで筆者の個人的経験を紹介したい。それは、シンガポールの友人の夫人を、東京の高級デパートでの買い物の手助けをした時の体験である。その女性が買った品物は決して東京のデパートのみで販売するような高級舶来品ではなかった。しかも自国シンガポールでより安く買えるのに、わざわざ飛行機に乗って東京に来るのはなぜだろうかと疑問に思ったので、思い切って尋ねてみた。
彼女が言うには「ここの店員さんの接客態度をまた味わいたいために来たのよ」と、素早く親指を突き出し、王女様にでもなったかのように、満面の笑顔で囁いたのである。
コロナ禍が日本全国で猛威を振るうようになってから、日本人の商いの形態も極めて大きな影響を受けるようになった。買い物をする客は皆、口にはマスクを付け、売る人も客とは一定の距離を保ちながらの商いとなり、取引は出来るだけ簡潔明瞭の応対で、機械的に済ませるようになっている。
サラリーマンは感染を避けるために、会社への出勤を制限され、勤務が終われば、一杯飲んで気分転換を求めようと思っても、飲酒時間は早めに切り上げるべきであるとの制限を守らなければならなく、窮屈で息が止まりそうになってしまう時もあるという。そのためもあるのか、「統計によると、コロナ禍が始まってから、日本では「自殺」の数が統計から明らかに増えてきたのである。
チェーン店を多く抱えている大規模な飲食店の中には、経営が成り立たなくなってきている。IT企業が集まる一等地に100席の大きな店を構えた飲食店が、家賃を払えなくなって来たので、一大決心をし、店を全部閉めて、ネット通販へ舵を切った例もある。新型コロナの感染者数は今や国内では2千人を超え、なかなか終息の気配が見通せない状況である。
この様な新しい生活を生き抜くキーワードとしては、「健康」、「衛生」、「自宅」と「習慣」の4項目だと思われる。即ち、自己の健康に留意し、衛生状態に気を付け、食べ物は自宅に持ち帰るかデリバリーを利用し、支払いはキャッシュレス決済に切り替える等々、云わば「巣ごもり消費」になれる慣習を身に着けることが推奨されている。
日本人はこの多災多難な島国に生まれ、小さい時から幾多の苦難を乗り越えてきており、忍耐力、競争力と改革力にも長けているという定評がある。日本独特のお客様商売にもこの伝統的な精神を生かし、自信を保持すれば、素晴らしい明日が自ずと開けるものと信じたい。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.195
早氏 芳琴