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「はやぶさ2」宇宙からのプレゼント、 歓喜に湧く母国に届ける!
「はやぶさ2」宇宙からのプレゼント、 歓喜に湧く母国に届ける!
全世界に蔓延したコロナ禍のモヤモヤした雰囲気が、一挙に吹き飛んでしまった。
日本製の小惑星探査機「はやぶさ2」が、6年50億キロの歳月と距離を経て、宇宙の小惑星への2度の着陸と、人類史上初めてである人工クレーターを作り、小惑星の砂を採取するという至難の任務を成し遂げたのである。人類の宇宙探査史上に新たな大きな一歩が踏み出されたこの偉業は、日本ばかりでなく、全世界の宇宙探査の輝かしい成果となり、コロナ禍に悩まされている、全世界の人々に「誇り」と「自信」を取り戻させたプレゼントであると言えよう。
はやぶさ2が小惑星「リュウグウ」から持ち帰ってきたカプセルには採取されたリュウグウの砂が入っている。はやぶさ2自身は、カプセルを切り離した後、地球に衝突する軌道から直ちに離れ、新たな探査の旅へと、また飛び立って行ったのである。次にまたはやぶさ2に会えるのは、更に100億キロ飛んだ後の、2031年になる予定となっている。
はやぶさ2は日本で289億円かけて開発され、2014年に打ち上げられ、有機物がより豊富とされるリュウグウに2度着陸し、太陽系が誕生したころの姿を保つ砂の採取に成功したことは確実視されており、生命の材料が宇宙から来たのではないかという謎に迫れると期待されている。月より遠い天体に着陸した探査機が帰還するのは、2010年の初代「はやぶさ1」以来2代目である。
目下、天体からの試料採取では、大国が鎬を削っている真っ只中にある。特に米中両国の競争が激しい。現在、日本は技術の優位性と経験を生かして、こうしたプロジェクトを先導できる立場にいる。しかし、日本はあくまでも、宇宙探査は国際協調の立場を崩すつもりは全くなく、今後とも、宇宙探査人材の育成や宇宙探査機の開発に尽力する決意に変わりはないとの認識である。
ここで一つの琴線に触れるエピソードを紹介したい。実は、この小惑星探査機はやぶさ2に使われている「特殊なネジ」は、日本の地方にある中小企業の特殊製品である。同企業は関東中央に位置する埼玉県羽生市の金属加工会社「キットセイコー」の田辺弘栄社長の率いる中心メンバー10数人の町工場である。
田辺社長の心中は、豪州まで駆けつけて、自分らが汗を流し手潮に賭けて製作協賛したはやぶさ2に一目会って、その労をねぎらいたかったようだが、そのようなことも果たせず、ただただ宇宙に向かって両手を合わせ、十年後の無事再会を祈るばかりに終わったというのである。
ところで同社は、1970年に日本初の人工衛星「おおすみ」が打ち上げられた時から、日本の宇宙事業に携わってきた。今回のはやぶさ2には、本体の様々な機材を取り付けるためのチタン合金製の特殊ネジを、約100種類提供した。
田辺弘栄社長は、「宇宙に行くものを作っているという一体感は、わが社にとっても非常に重要であり、今後も作り続けて行きたい」と淡々と抱負を述べている。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.194
早氏 芳琴