まだ２カ月程の時間があるのに、東京では今年の年末最大の商戦である「おせち料理」の拡販合戦が、既に激化している。幾つかの全国紙は申し合わせたかのように、目立つように紙面に大きなおせち料理のカラー写真とオンラインの購買方法が紹介されている。

　コロナ禍の影響で、長い“巣ごもり”を余儀なくさせられてきた人々の積もり積もった鬱憤を、一挙に吹き飛ばそうと集められた山海の珍味が、一流シェフ―の手によって作り上げた料理の写真を見せられると、確かに人々の食欲を大きく引き立てる効果は十分にある。 　

「三密」防止で長く制限されて来た行動の不自由さや食欲への不満が、家のパソコンや電話一本で直ちに解決できるようになると、この得がたいチャンスを見逃す訳にはいかないとの心理になるのであろう。商いのプロ達が待ち望んでいたこの「千載一遇」の好機が今年のコロナ禍時にめぐり合ったことが、新しい販売記録の更新を期待させている。日本における年の瀬のおせち料理の販売合戦は、景気が如何に変動しても、年々必ず増えることになったようである。

　実例として、高級デパートの高島屋の統計によると、ここ数年の,売り上げは毎年増加しており、去年は前年比3％程伸びたが、今年は恐らく8％は増えると予測している。社内におけるこのような楽観的な雰囲気を盛り上げようと、同デパートは既に報道関係者に今年のおせち料理の内覧会を催したほどである。

　さらに、同デパートはコロナ禍の重苦しい雰囲気を吹き飛ばそうと、取り揃えた約20種類のおせち料理に、年末のジャンボ宝くじ（1枚300円、連番10枚）を付けて「福おせち」と名売って、景気の盛り上げにも力を入れている。加えて、外食控えが続く状況下で、家にいながら一流の味を堪能してもらおうと企画した割烹・フレンチ・イタリアン・洋菓子「夢の饗宴おせち」や、帰省できないことを想定して離れて暮らす親と子が双方に贈るための個食向けなどのおせち料理も用意されているとのことである。

　店頭での予約は先月9月23日から始まり、オンラインを先行させて混雑を避けるように工夫して、11月14日までに注文を終えた客には、送料無料の特典もあるという。

　スーパーも負けられないとばかり、例えば、本州や四国に展開している「イオン」、「イオンスタイル」も本月1日から各種料理の予約の受付を始め、注文できる品目数は昨年より約2倍増やし、オンライン販売の強化をしている。

　一方のアマゾンは10月4日までに予約した客には、ポイントを還元し、伊勢エビなどを使った定番から、すき焼きやカニなどの豪華食材をセットにしたものなど約300種類の幅広い品をそろえて、客に選択の楽しみも提供している。

　コロナ禍の災難に苦しめられてきた中で、人々が「おせち料理」を堪能し、笑顔で、新年を迎えられることが祈念される。