社外からの来訪を歓迎する 大手商社の狙いとは?
三井物産は日本を代表する5大総合商社の一つである。その大手商社が東京大手町の旧本社跡地に建てた新社屋の第8階のフロアには、主に社外の来客を接待し商談する豪華な接客専用の場が新設されている。
日本の総合商社の社屋内にこの様な特別の部屋が設置されるのは、同社が初めてである。なぜなのだろうか。その意図や目的が何であったのか、注目に値するところである。
この特別なフロアには、高級なソファが並び、案件ごとに中小規模の議論を交わすことのできる区画もあり、さらに、デジタルビジネスを推進する各種の器材も揃えていると言うのである。この部署の責任者は、「ここでは新しいビジネスが成立したり、あるいは社外のパートナーとの事業内容に関する調整や議論が交わされる極めて重要な場でもある」と述べている。加えて、時には外部の取引先から、最新のビジネス上のアイデアや秘訣を聞くチヤンスもあって、大いに活用できる利点も見逃せないと言う。
近年、日本の大手商社を取り巻くビジネス環境にも大きな変化が起きている。まず、社外の人が会社を訪問する時のセキュリテイ管理が非常に厳しくなってきていることがある。一方で一つの取引交渉に複数の部署が絡み合うこともあるため、一度に集まる関係者の数が多くなり、社内にこのような多くの関係者が一同に集まり、客との討議を必要とする大きな部屋が必要不可欠となっている。
さらには、近年の日本経済は決して高度経済成長期のように、すべてが順風満帆の状況ではなくなっているため、この様な受難な時期を乗り越えるにはどうしても、思い切った大胆で迅速な改革の展開が必要となる。時代に合った新しいジネスを展開するには、最新の市場情報、取引形態や国際交易の最新ルールの理解等が必要となってくる。つまり、大手商社であろうとも、常に新しい情報の吸収による迅速な対応を怠ってはならない。
新時代のバスに乗り遅れることになると、取り返しがつかなくなる。新情報の収集が大切であることは明白で、そのため、ビジネスに関係ある相手との面談や交渉には、討議がしやすい環境が必要となって来るのである。
新社屋にこのような接客用特設フロアを提案したのは、同社の中堅社員からのアイデアであった。さすがに国際貿易の最前線で戦ってきた若きビジネス戦士の発想は大胆で切実でもあり、それを受け入れた社内上層部の決意と判断も賞賛すべきであろう。
この新社屋8階の豪華な接客フロアは、連日「満席御礼」に近い盛況が続いていると言う。社内ではこのフロアの利用状態を日々詳細に記録し分析することで、この新設の豪華な接客フロアの実質的な効果を確かめることにしている、とのことである。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.190
早氏 芳琴