見えない世界との共存
わたしの大切に思っているひとがまたひとりこの世を去った。夫アダムの従兄弟で、彼はノースキャロライナに住む科学者であり医者であり、世界中にファンがいて、愛にあふれる人だった。
彼には不思議な魅力があり、たとえ言葉を発しなくても、彼に会うだけで人々は愛を感じ癒されていく。無償の愛を与え、そして多くのひとが彼を愛した。わたしもその一人だった。
どうしても、彼のお別れの会に参加したかった。しかし、いま、ノースキャロライナはここニューヨークよりも新型コロナが猛威を振るっている。往復の道中、空港、機内、ホテル、多くの人たちに接触することになる。そのうえ、ニューヨークに戻ってきたら2週間の隔離生活を余儀なくされる。それでも行きたい、お別れの会に参加したい気持ちはあったが、感情だけでは動けない。泣く泣く今回は、Facebookライブの画面越しからつながることとなった。
もし、これが何十年もまえだったら。画面越しでつながることさえできない。そう考えると、ありがたい世の中だ。
医者でありながら、目にはみえないスピリチュアルな世界にも精通していた彼。お別れ会は、その彼らしい説明のつかない不思議なことがいくつも起きた。
その一つに、彼の同僚が「ヒーリングレイン(癒しの雨)」という、彼が生前、大好きだった唄のはなしをはじめたときのこと。なんと、画面越しをとおして雨の音が! ついさっきまで、晴れ渡っていたのに。
はじめは、わたしの聴き間違いかと自らを疑った。「そんな偶然、起きるわけないって」って、信じられなかったから。その間、同僚は彼との思い出話を続けていた。
そして、「大事なことは、目に見えない。でも、確かにある。わたしたちとともに。彼のピュアで愛にあふれたそのエネルギーは、これからもわたしたちの心に、生き続けるから…」。
そうスピーチした途端、堰を切ったような激しい雨の音が画面を通してまでも響き渡った。いま、ここに、わたしたちとともに、間違いなく彼がいる! 目には見えないけれど、その場の時間を共有したわたしたちだれもが、たしかに「彼」の存在を感じた瞬間だった。
まもなく、同僚のはなしが終わるのを待つかのように、雨がやんだのだった。
ひとは、この世を卒業してもなお、誰かの心に生き続ける。だいじなひとのその存在は、決して消えることなく続いていく。あの世とこの世の境界線などなく、いまも同時に存在しているのではないだろうか。
目には見えないけれど、確かに在る彼のエネルギーに触れ、そんなことを思った。
私の旅ストーリー No.204
大森 千寿
NY在住。香川県高松市生まれ。アーティスト・作家・アートセラピスト・米国NLP協会認定マスタープラクティショナー・現代レイキマスター。NY・ハワイ・日本の3箇所にアートスタジオを構え活動。著書に、amazon電子書籍「ハワイに不動産を購入して人生10倍楽しむ方法」「ハワイで聞いた! 32通りの生き方(第一弾)」「人生の冒険」がある。NYで新しい扉を開く2日間プログラムやニューヨーカーと行く穴場ツアー、アート最前線ガイドなど開催中。 www.chizuomori.com ameblo.jp/adamwestonart