ドラッグストアから、マスクと消毒液が忽然と姿を消した。エボラやSARS、MARS流行時は対岸の火事と思っていたが、今回の新型コロナウイルスは日本国内で既に150名以上の感染者が出ており、危機意識が高まっている。そして中国・武漢の病院内で防護服を着用した医師や看護師、殺到する来院者のニュース映像を見て既視感を覚えた。
1967年。アフリカ・ザイールでの内戦中、兵士達が出血を伴う致死率の高い原因不明の病気で次々と倒れていく。事態を重く見た米軍は、これ以上感染が広まらないよう爆弾を投下し、兵士もろとも周辺を浄化、全てを隠蔽してしまう。しかしそれからおよそ30年後、壊滅させたはずのウイルスが再びザイールで猛威をふるい、アメリカ陸軍感染症医学研究所に所属するサム・ダニエルズ大佐が視察に訪れ、その感染力の強さ、惨状に驚愕する。帰国後、アメリカ国内でも似たような症状の患者が出たため、サムは警報を発令するよう上司であるビリー・フォード准将に訴えかけるが…。
今から25年も前の作品とは思えないほどのリアリティで、鑑賞した当時、どのようにウイルスが拡散していくのかが子供にもわかりやすく表現されていて強く印象に残っている。具体的には、ある野生動物に引っ搔かれた傷口から、その傷を負った者が病院へ、病院で咳やくしゃみが飛沫して、あるいは採血中に誤って注射針を刺して血液から―といった具合で、現実的な想像がしやすい。また、強行脱出や暴動、略奪行為など世紀末的な描写はなく、パニック映画というよりもウイルスに対して適切な対応を取らねばならない、という啓発映画と見ていいかも知れない。
近年ではSNSのデマや、モキュメンタリー=いかにも事実のように作られたフェイク映像も流行っているので、何を信じればいいかわからなくなることもある。が、基本はマスク、手洗い、うがい、アルコール消毒、と他の風邪と同じ予防法を怠らないこと。個人的には1ヵ月ほど自宅待機で公欠扱いにでもなればいいなと思っている。
●加西 来夏 (かさい らいか)
映画は年間100本以上視聴、訪問39ヵ国〜の旅する映画ラヴァー/広島へ行ってきたばかりですが、事態が落ち着くまで旅行は控えようと思いました。早くワクチンや特効薬が開発され、多くの人命が助かりますように。
(日刊サン 2020.2.13)