秋も足早に通り過ぎて気温は緩やかに冬に向かって進んでいきます。日本では四季がありそれぞれの季節を愛でることができましたが、今年の気候を振り返りますと、まるで夏と冬の2期しかなかったのではないか、地球温暖化の影響が色濃く出ているのではないか、と不安になります。「古寺に灯のともりたる紅葉かなーー正岡子規」そうした中でも自然界では山々が紅色に色づき、紅葉狩りを楽しむ方々も多いようです。我が家の庭の紅葉も樹冠あたりが濃い赤に染まり始めています。秋は木々の移ろいを楽しめるだけでなく、美味しい食材も数多く出回る季節ですので、つい過食になりがちです。
肝臓がフォアグラ状態になる脂肪肝は近年増加傾向にあります。お酒を召し上がる方のアルコール性肝炎だけでなく、飲酒しない方にも非アルコール性肝炎が急増しているとのことです。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるように自覚症状がないまま進行し、治療が遅れるため非アルコール性脂肪肝のケースでは気づいた時には慢性肝炎から肝臓がんや肝硬変へと進行してしまうこともあるそうです。
これまで肝臓のトラブルは飲酒習慣のある方に多いと言われていましたが、そうでない方も日常のケアを大切にして脂肪肝に注意を向けたいものです。
脂肪肝は治りにくいと考えておられる方々に朗報です。脂肪肝の専門家である浅間総合病院外科部長の尾形哲先生のお話を要約してみましょう。
非アルコール性脂肪疾患(正式名NAFLD)の現在日本で判明している患者様数は、約2300万人に上るそうです。肝臓は身体の化学工場と呼ばれるように身体が機能するため獅子奮迅の働きをしています。主な役目として、①栄養の代謝②解毒③脂肪の消化を助ける胆汁液の産生があります。
健康診断で肝細胞の様子を知るには、ALT、AST、γ-GTPの項目を覧ください。γ-GTPやALTの数値が高い場合には肝臓が働き過ぎているサインです。脂肪肝の場合には肝臓で炎症が起こっているので、ALTが高くなります。(γ-GTPが高くなる場合も)健診などで脂肪肝が疑われた場合には早く改善させて肝臓が正常に機能するようにしたいものです。
3か月で改善させるための極意を尾形先生のお話からお伝えしましょう。①甘い飲み物を止める②ご飯を半分に減らす③野菜を2倍に増やす④加工食品を減らす⑤体重を毎日記録する、以上五か条です。脂肪肝は肥満の方は特に注意が必要となります。五か条の内、最も気を付けるべきものが飲み物だそうです。液体に果糖が入った飲み物は糖質の吸収が早いためにしばらくは厳禁と思っておかれてもよいかもしれません(特にスポーツ飲料に注意!)。
因みにALTやASTが高い方は飲み物に注意するだけで数値が改善するケースもあるそうです。脂肪肝に大敵なのは脂肪よりも糖だと思っておかれると良いでしょう。不安な方は3か月頑張ってみませんか?
神楽坂発 お身体へのお便り No.122
安田祥子 Akiko Yasuda
株式会社jast代表取締役会長
統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー
最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。
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