メキシコのとある女性は、過去10年にわたり自宅にて何百羽ものハチドリを看護してきたが、そのことで最近ソーシャルメディアで話題となっている。
AP通信によると、現在73歳のカティア・ラトゥーフさんは、メキシコシティのポランコ地区にある自宅アパートを、病気や怪我をしたハチドリや幼鳥のための診療所にした。彼女は、メキシコをはじめとするラテンアメリカ全域で、アマチュア、プロを問わず鳥を愛する人々の参考資料となっている。
ラトゥーフさんの診療所では、壁沿いや寝室の窓を何十羽もの小さな鳥が頭上でブンブンと飛び交う。巣から中庭に落ちた鳥などがここに運び込まれ、彼女は怪我の手当てをし、餌を与えている。
ラトゥーフさんが鳥の世話をするようになったきっかけは、他の鳥に傷つけられた一羽のハチドリだった。この鳥を助け、一緒に暮らすことで、夫の死、そして自身の癌の闘病の後、悲しみと孤独から抜け出すことができたという。彼女は回復に専念するために5つの高級ブティックを売却し、その後、友人や知人たちがハチドリを届けてくれるようになった。
ハチドリはアメリカ大陸原産で、重さは4~6グラム、体長は10~12センチほどしかない。ほとんどが雛の状態で、また多くは怪我や病気の状態で診療所に運ばれる。物にぶつかったり、巣から落ちたりして羽を怪我していたり、街で人気のハチドリの餌台から汚染された水を飲んで感染症になったものもいるという。
ほとんどのハチドリはラトゥーフさんが眠る寝室にいる。自分で飛び、餌を食べられるようになると、ハチドリは隣の部屋に移され、最終的に放鳥する準備をする。元気になった鳥たちは、街の南側にある森林地帯で放たれる。
5月以来、ラトゥーフさんの診療サービスに対する需要は急増している。誰かがソーシャルプラットフォームのTikTokに彼女の仕事についてのビデオを投稿し、150万回以上も再生されている。
ラトゥーフさんの診療所は、メキシコ国立自治大学のイスタカラ・キャンパスのような正式な機関もサポートしている。同大学ではリソースや時間、スペースが不足しているため、症例を彼女に紹介することもあるという。
同大学の研究者の一人である鳥類学者のマリア・デル・コロ・アリズメンディ氏によると、メキシコの首都であるメキシコシティには22種のハチドリが生息しており、その中でもワオハチドリとベリリンハチドリが最も一般的だという。メキシコには約57種、アメリカ大陸には約350種が生息している。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.8.9)