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コラム 神楽坂発 お身体へのお便り

【神楽坂発 お身体へのお便り】眠ってもとれない疲れ

 「咲き初めてふりそめにけり五月雨に ゆかりや深きあじさいの花阪正臣」

 今年は例年になく庭の紫陽花の花芽が多くつきました。どんよりした梅雨の時期に凛として咲く大輪の紫陽花はこれから迎える光溢れる夏の華やかなプレリュードのように感じます。

 蒸し暑い梅雨時期や気温の高くなる夏には眠っても疲れが取れないと感じることがありませんか? 疲れを感じると、つい栄養ドリンクやアルコールなどに頼りがちになることもありますが、むしろ疲労の悪化に繋がるそうです。

 私たちが疲労を感じるのは疲労因子FFが増加することで信号として脳に発信されます。このFFが増加すると錆びついた細胞を修復するために疲労回復物質FRが発生します。私たちの身体は疲労に対しても自衛手段を持っているのです。但し、活動中はエネルギー産生工場のミトコンドリアなどで活性酸素が大量に発生しますので、FRによる細胞修復が追いつかないために、疲れが溜まっていきます。

 ではいつFRによる細胞修復が効果的に行われるのでしょうか? 昼間と異なり、通常ヒトは夜間には活動が低下します。自律神経系では交感神経の活動が抑制され、睡眠を司る副交感神経が活発になります。そのため、活性酸素の発生量も低下し、細胞損傷よりも修復が上回ります。つまり、疲労を回復させるには細胞の修復を促す睡眠が不可欠なのです。

一言に睡眠といっても深く眠り、脳が休息するノンレム睡眠が大切になります。睡眠には眠りの浅いレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠があり、身体を休めるためのレム睡眠時には脳は記憶の整理などのために活動しています。脳の細胞修復が進むのはノンレム睡眠中なのです。疲労感は脳の神経細胞が活性酸素などで錆びついて自律神経機能が低下した状態だそうで、運動などで起こる筋肉疲労とは異なります。自律神経機能は60代では20代の約1/4となるそうですので、年齢を重ねると疲労感が日常的になる可能性もあります。脳の神経細胞の錆が修復されないまま栄養ドリンクなどでごまかしながら酷使され続ければ老化の促進だけでなく最悪のケースも想定する必要があるでしょう。

 蒸し暑く日照時間が長い時期はもともと30分程度睡眠時間が短くなります。では、快適な睡眠を取るにはどうしたらよいでしょう。睡眠中は寝汗をかくなどで体温コントロールが難しく、自律神経に負荷がかかったままになりますので、室温を概ね25℃程度に設定し、朝まで切らず寝室を涼しく保ちましょう。

 また、脳の温度を下げるには鼻から冷たい空気を吸うことが最も効果的だそうで、鼻は脳の冷却装置と覚えておきましょう。PCなどは早めに切り、室内を暗くして深呼吸などで副交感神経の働きを助けるのは上策です。

 蒸し暑い時期を迎える今から疲労感を軽くする生活習慣の準備をして、紫陽花のように凛として健やかな夏を迎えたいものです。

神楽坂発 お身体へのお便り No.117

安田祥子   Akiko Yasuda

株式会社jast代表取締役会長 

統括メディカルアドバイザー、フリーライセンスドクター、「農林水産省 産学共同プロジェクト」メンバー

最愛の娘の突然の死をきっかけに、健康は当たり前のものではなく、自らの手で守り育むものと痛感し、分子生物学や医学などを学ぶ。2013年(株) jastを設立し家庭と医療機関を結ぶ架け橋としてのアドバイザー育成に取り組む。これまで200件以上のクライアント様の健康・医療・日常生活のご相談に応えるとともに、教育部門JAMAで主席講師を務め分子生物学の観点から細胞に働きかける栄養素や最新の遺伝子研究など多岐に渡る講義を行う。数多くの機関誌への執、講演会、セミナーなども行っている。

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