あるＦＬ姫野が「試合前のハドル（円陣）のときに、最低30分延期と聞いた」と選手自身も戸惑うほどの、急な天候の変化でした。大雨でも試合を行い、真冬の雪の激戦が伝説として語り継がれるラグビーですが、この日は雷混じりのゲリラ豪雨が都心部を襲い、選手と観客の安全面からラグビーシーンでは珍しいキックオフの延期となりました。

珍しい試合中断

　結局1時間遅れの午後3時過ぎに試合が始まります。試合開始時点で８位（全12チーム）と2部への入替戦の可能性もあるラムズは、前半を17－22と苦しい流れで折り返します。

　今季のチームは故障者が続出し、４カ月前の開幕戦のスタメン15人中、この日も先発に名を連ねたのは5人のみ。「80分命をかけて、闘いにいく」とは、この試合にも出場したある選手の言葉ですが、タックルやスクラムで生身の体をぶつけ合う競技の性格上、一度負傷すると離脱期間も長くなります。まさにチーム一丸でシーズンを闘うのがラグビーです。

イレギュラーな激戦の行方は

　後半は開始15分過ぎにまたも落雷の音がとどろき、4月の東京の空にひょうまで舞い落ち、35分試合がストップ。この2回目の中断からの再開後、ラムズが元イングランド代表のヒューズのトライなど、一挙3トライを奪い一時リードしますが、試合終了間際に再度逆転を許しゲームセット。雷雨の激戦はあっけない幕切れとなりましたが、7点差以内の惜敗で獲得できるボーナスポイントを奪い、来季の1部残留が確定しました。

1万人の集客作戦は成功

　この試合は、ラムズのクラブ史に残る試合にもなりました。クラブの運営が「秩父宮真黒計画」として大々的な㏚を実施し、雷雨の中1万1000人のファンがスタジアムに来場しました。43歳と若きＧＭの西辻さんは「お恥ずかしい話ですが観客数が（前身の）トップリーグ開幕以来、1万人を超えたことがありません。自分たちが体感したことのないスタジアムの風景を“新しい風景”と表現し、ブラックラムズファミリー全員でその風景を創りたいと進めてきた」。その思いを語りました。

　早稲田や明治が出場する大学選手権の決勝に5万人が集い、昨年の日本対ＮＺに7万人が詰めかけたラグビーですが、プロ化を進めるリーグワンになるとぐっと観客数が落ちるのが現実。まさにリーグワン発展のボトルネックでもあります。