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【今どき ニッポン・ウォッチング】大阪の「IR」は日本の観光ゲートウェーになりうるか?!
カジノを含む統合型リゾート(IR)の大阪府・市の整備計画が正式に政府に認定された。今後カジノの免許などの付与などの手続きが進めば、日本で初めてのカジノ施設が誕生することになる。これが本当に「日本のこれからの成長戦略」となりうるのかが、注目されるのである。
そもそもIRとは何か、それはIntegrated Resort(統合型リゾート)の略語である。大阪府の計画では、大阪湾の人工島「夢洲」にカジノのほか、三つのホテルや劇場と展示場の建設が行われ、2029年正式に開業する予定になっている。この三つのホテルは、グレードが異なり、世界的なアーティストのコンサートが見られる劇場ができる。その他にも6千人以上が入れる大会議室もある国際会議場や、計2万平方メートルの展示場もつくる予定になっている。
カジノの設備は、使う金額によって三つのフロアに分かれる。スロットマシンを始めとする電子ゲーム6400台や、ポーカーなどのテーブルゲーム470台を設置する予定になっている。レストランやバーは、VIPがプライバシーを保ちながら遊べるサロンも用意されることになっている。
今のところ、年間の来客数を2千万人と見込んでいる。その7割の1400万人が国内客を想定している。年間の売り上げは5200億円で、そのうち4200億円はカジノの収益とされる。以上の数字はすべてが推計によるもので、根拠のはっきりしたものではない。
IRは民間事業者であるため、毎年大阪府・市には、計1060億円の納付金などを入れることになっている。これらの資金は子育ての支援や教育、ギャンブル依存症対策などに使われる想定になっている。
国内客の依存症防止のため、入場料は1人6千円と高く課し、入場回数を7日間で3回、28日間で10回までに制限している。しかし、IR設置に反対している人たちは、依然として納得できていないのが、問題となっている。
もともとIR設立反対派の意見としては、大阪府が1兆円を投じて8割に当たる4200億円がカジノでの収益実績になるのは、かなり背伸びをした収益計画であり、全く達成不可能であるということだ。たとえ中国から大勢の富裕層が来たとしても、中国政府は一昨年の刑法改正で、海外でのギャンブルを組織的に誘客することを犯罪行為として取り締まることにしている。マカオは既にこの逆風にさらされているのが実情である。
また、昨年世界経済フォーラムが発表した2021年版の「旅行・観光開発指数」の世界ランキングでは日本が1位となっているので、今更IRを開設し、依存症患者を増やすことは全く必要ないとも指摘している。
しかし、政府がすでにIRを「日本の成長戦略」として認可した以上、これからはただただ厳しく見守ってゆくしかないのである。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.260
早氏 芳琴