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【今どき ニッポン・ウォッチング】“寝ずに働くのが日本人女性の美徳”?! 睡眠時間の差、顕著
2021年の「経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本人の平均睡眠時間は、7時間22分で、世界33か国中、最短であった。特に注目されたのは、男性よりも女性の方が、13分短かった。その主な原因をよく調べると、女性の家事負担の影響が特に重かったからであるという。
一方、同じ年日本国内の社会生活基本調査でも、6歳未満の子がいる共稼ぎ夫婦の家事関連時間を見ると、妻は6時間33分、夫は1時間55分働く時間が増えたことになる。
近年外で働く女性は増えたが、日本の夫の家事労働時間は先進諸国と比べても、まだまだ驚くほど長くはないようである。妻が睡眠時間を削って、家事時間を捻出しているのが実情のようである。
大阪府のある家庭の調査によると、妻が(47)、夫が(51)と息子(15)、娘(13)の4人家族を対象に調査した結果、妻が強調したのは「自分が最もよく寝られていない」という。
この女性の生活サイクルを聞くと、「夫の帰宅は早くて午後10時ごろ。それから夫に夕食を出し、食器を洗い、受験生の長男は午前0時頃に勉強が終わり、自分はその後風呂に入ってから眠ることにしている。翌朝は午前7時前に家を出る夫に合わせて6時頃には起き、朝食を用意する。3人を送り出した後、自分は夕方までパートの仕事に出かけ、帰宅後にまた夕食の準備をするのが変わらぬ日課」だそうだ。睡眠時間は、長くて6時間ほどであるという。
日本女性のこのような生活実態を、諸外国の有職既婚女性の睡眠時間で比較すると、日本以外の幾つかの国で既婚女性の睡眠時間が日本女性と同じように男性より短い場合があるが、それでもやはり日本人女性が特に短いのが目立つのである。
日本のNHKが番組制作の参考資料として行った「国民生活時間調査」によると、平日に最も寝ていないのは50代の女性で6時間36分、次が60代女性の6時間52分、40代女性の6時間53分と続いた。
ある「睡眠学」を専門に研究している研究者によると、「寝ずに働くのが美徳」であるとの日本の伝統意識が、いまだに残存しているのも、原因の一つであるといわれている。
ここで一つの問題提起として懸念されることは、睡眠時間を削ってでも家族のために家事労働をすることが「日本人女性の美徳」であるという概念が、女性の権利軽視に悪用されることであり、これからは最大限に配慮が必要となってくるであろう。働く女性にも、当然として健康管理に十分な睡眠の休息時間が得られるべきであるのを、我々は決して忘れてはいけないのだ。
今どき ニッポン・ウォッチング Vol.259
早氏 芳琴