ノースショアには「ガス室(Gas Chambers)」と呼ばれるサーフィン・スポットがある。
死を感じるほどの恐怖を味わえる高波のためにこう呼ばれるようになったと言われている。
その一帯の砂浜に設置された長い柵が問題となっているとハワイ・ニュース・ナウが伝えている。
何のための柵なのか?
問題の柵は、ケ・ヌイ・ロードの住宅海側の砂浜に沿って建てられている。
家の持ち主によると、海岸の侵食を防ぐためのものだという。
長年住んでいるディーン・コスト氏は、「柵を建てたのは、人々に堤防状になっている砂山を登ってほしくないからだ。人が歩くことで砂山が崩れ、海岸の侵食につながる。波による侵食を除いては最も大きな問題だ」と述べている。
40年以上前にこの家を購入した元教員の同氏は、ナウパカと呼ばれる植物を保護するために家の前に柵をめぐらした。ナウパカが生育することで、砂と土を侵食から守ることができるからだという。
「この植物はビーチの平坦な部分に育って根を張ってくれる。我々が柵を設置したのは、土地の所有権を主張するためではなく、植物を守ろうと考えたからだ」
しかし、ビーチを利用する人々の中には違う見解の人もいる。
柵は一般の人々がビーチに行くことを妨害するものではないかという。
一部の土地所有者がビーチへ向かう人々に怒鳴り声を上げた、と話す人もいる。
また、安全上の観点から柵は危険だと懸念する声もある。サンセット・ビーチ地区の自治会長を務めるスタン・メイ氏もその1人だ。
「危険な高波のために、海から素早く岸に走り上らないとならなくなる状況は少なくない。今日のような高い波が起こり、必死で岸に上がってきた時にこのような柵があったらどうなるか」
その一方で、メイ氏は、「この地区に長い間暮らしている人々がおり、自分たちの住んでいる土地が侵食によって失われようとしている。経済的な打撃は計り知れない」と住民側にも理解を示している。
海面が上昇し、冬季の高波によって海岸が侵食されている土地に居住する不動産所有者は、何とか侵食を防ごうと独自の対策を行なっているが、これもその一つだ。
柵を建てたコスト氏に、ビーチから人を遠ざけようとしているのか尋ねたところ、「ビーチを所有しているわけではないし、それはできない」と答えた。
州土地自然資源局は、この柵はビーチへのアクセスを阻害しているわけではなく、不法行為ではないという見解を示しているが、ハワイ・ニュース・ナウの取材に対して次のように回答している。
「海岸は公共のものであり、不動産所有者は、自分の住宅が面している州有地から一般の人々を締め出す権利はない」
コスト氏が設置した柵は、11日の高波にさらわれてなくなったという。
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写真:Shutterstock.com
(日刊サン 2023.1.12)