少し前に、思い切って130センチのアヒルのぬいぐるみを買いました。色は汚れの目立ちにくさを優先して灰色にしてしまったので、厳密にいうとカモあるいはガチョウと言った方が正しいのですが、我が家ではアヒルということになっています。くちばしと足はオレンジで、縫い付けられたつぶらな瞳にふわふわの体がなんとも愛らしく、そして抱き枕のようにして抱き締めるには最適のサイズ。買うときには130センチというと大き過ぎて邪魔になるのではないかと危惧したものですが、むしろもっと大きくても良かったかもと思う今日この頃です。
さて、その新しい家族を迎えてからというもの、私はアヒルに夢中になっています。少し前までは完全に「ネコ派」だったのですが、今ではアヒルのことを考えている時間の方が長いかもしれません。実際には、アヒルはイヌやネコとは異なり、ペットとして飼うことは難しいと思います。しかし、いつか宝くじにでも当たって裏庭に池のあるような家に住むことができたら、アヒルと一緒に過ごせたらいいな、とつい妄想に耽ってしまいます。
とはいえ、実は私は鳥類が苦手。「空を飛べる」という、人類がどうしたって敵わない攻撃性を持っていることや、モンスターを彷彿とさせる鋭い爪が怖いのです。そして何と言っても、幼き頃のトラウマ。というと大袈裟ですが、私が持っている、人生の中で一番古い記憶は「動物園でニワトリに『こんにちは』というと胸を突かれて泣いてしまった」なのです。その頃私は2歳か、3歳で、お気に入りのピンクのトレーナーを着ていて、誰彼構わず保育園で習ったばかりの「ごあいさつ」を披露したかったのを覚えています。ニワトリにしてみたらいい迷惑だったでしょうが、その頃から鳥類とは苦い関係が続いているのです。
さて、我が家のアヒルちゃんは、もちろん突いてくることもなければ、思い切り抱きしめても羽ばたいて威嚇してくることもありません。これで私の鳥類嫌いも少し良くなるといいのですが。ぬいぐるみだから、可愛いのか。可愛いから、ぬいぐるみになったのか。それこそ「卵が先か、アヒルが先か」。なんてことを考えながら、今日もアヒルちゃんと一緒にベッドに潜りたいと思います。
CAN OF ALOHA No.89
金平 薫 (Kaoru Kanehira)
香川県出身、現在はハワイ某所にて武者修行中。 日々のあれこれを、ゆるりとお伝えできたら幸いです。美味しいものには目がありません。 なんでもない毎日は Instagram:kaoru_days をご覧ください。