過呼吸、朝起き上がれない、食欲不振と3点盛り。このままだと鬱でしばらく寝たきりコースだ、と思い切って荷物もロクに持たず家を飛び出した。
暖かい日差しを浴びて、春爛漫、満開の桜に元気を貰おうと訪れたのは“弘前城”。長野県の高遠城址公園、奈良県の吉野山と並ぶ日本三大桜の名所のひとつだ。しかしこんな広い公園の中にあるとは…総面積はエンゼル・スタジオのグラウンド40個分。2600本もの桜が咲き乱れ、さすが見応え十分!ところで肝心の城はどこだろうと彷徨っていると「これ?!」と声が出たほど小さかった。元々は5層の大きさだったのが落雷で焼け落ち、その後再建して今のサイズになったらしい。それでも城からの眺めは良いし公園を含め、美しい場所には変わりない。
そして、世界文化遺産への登録が決まりブームが来ている“北海道・北東北の縄文遺跡群”のひとつ、“三内丸山遺跡”。縄文時代なんて単純で地味な文化だろうと思っていたが、15000年~2400年前まで10000年以上も続いたこと自体が世界史上では珍しく、文字は無し、奇抜で複雑な模様の土器や未だに正体が判らない謎めいた土偶がある。中でも“遮光器土偶“は女性をモチーフにしているという説があるが絶対に違う気がする。また、今回特別展示されていたクマやシャチ、猪風の土製品などもあり、ころんと丸いフォルムに愛嬌ある表情に、日本のkawaiiはこんな昔からあったのかと妙に納得した。
せっかくだから青森市の繁華街は行っておきたい、と新町の“かわばた”という地物を扱う和食店へ。意外にも青森は馬肉の生産地国内3位とのことで旨い馬刺しをつまみに地酒の田酒や豊盃を飲んでいたら、カウンター隣に座っていたお客様や店主に青森の名所、美味しいものを教えて頂き、気付けばスナックのカラオケで熱唱。おかげで憂鬱さはかなり飛んだ。
ショック療法の効果を実感しつつ、これから行く予定地にワクワクしていたー遺跡もそうだが、青森は実に興味深いミステリアスな土地なのだ。
●加西 来夏 (かさい らいか)
訪問国は39ヵ国、好きな言葉は「世界は驚きと奇跡に満ちている」/総走行距離700km弱…久しぶりの長距離運転で腰痛になりました。
(日刊サン 2022.5.27)